[up] [next] [previous]
  

独立行政法人福祉医療機構 WAM  2003年12月号より転載

     
  第9回チャレンジド・ジャパン・フォーラムセッションの模様から  
 
障害者だけのものではない「ユニバーサル社会」の実現を
 
 

 

 「チャレンジド(障害者)を納税者にできる日本」の実現をめざしたチャレンジド・ジャパン・フォーラムは去る8月21,22日、千葉市の幕張メッセ国際会議場で第9回フォーラムを開催した。このフォーラムは神戸市にある社会福祉法人プロップステーション(理事長=竹中ナミ氏)が民、産、学、官の連携をもとに1996年からスタートさせたもの。今回は、千葉県雇用労働課を実行委員に、「千葉からユニバーサルの風を」をテーマに掲げ、地元千葉県をはじめ国内・海外から多数の参加者を集めて開催された。

 21日のセッションでは、「ユニバーサル社会の創生に向けて」をテーマに意見交換会がもたれ、野田聖子衆院議員(自民党)、浜四津敏子参院議員(公明党)、堂本暁子千葉県知事、高梨憲司社会福祉法人愛光専務理事、山口亞紀彦千葉市職員、竹中ナミ社会福祉法人プロップステーション理事長(司会)の各パネリストが「年齢、性別、障害の有無に関わり泣く、すべての人が持てる力を発揮して住みなれた地域で安心、快適に過ごし、元気と誇りを持てる」という”ユニバーサル社会”の実現に向けて発信した。



日本版ADA法(障害者差別禁止法)制定に取り組む

野田聖子衆院議員(自民党)

写真:野田聖子議員 ユニバーサル社会は、障害者を中核にしてその隣に老人、女性がいると考えています。同時に障害者のための社会ではないわけです。機会のように完璧に動く人々を求めてきたのが戦後の日本であり、これに当てはまらない人々はいわゆる措置される人々で社会の構成員にならない位置付けでした。

 これまでつくられてきた男女共同参画基本法、高齢者法、身体障害基本法といった基本法は、いずれもこれまで社k氏の構成員として扱われなかった人々を同格に認めていこうというものです。ユニバーサル社会をつくろうとする基本法は、まさにこれらの人々を国民として同じに扱い、みんなでこの国を支え合っていこうということになります。

 みんなが力をあわせていかなければ次の新しい日本のステージに進めないという意識をこの十年の間に根付かせることがたいせつです。

浜四津敏子参院議員(公明党)

写真:浜四津敏子議員 私は参院議員になる前の弁護士時代にアメリカのADA方(障害者差別禁止法)を知り、また、スウェーデンにいったときにはスウエーデンがいかに質の高い社会であるかを学んだことがあります。ADA法の理念は、機会の平等、自立などですが、その根底には「障害者であれ、一諸に社会を作っていく」という基本理念があるわけです。日本のこれまでの障害者施策は「障害者はサービスを受ける立場」という受身の立場に位置づけられています。北欧諸国、WHOでは「ハンディキャップというのは障害者個人が抱える固有の特性であるということから、その人と環境との係わり合いをさす」という発想の転換がありました。野田さんとは日本版ADA法をつくることが共通の思いで、人間的側面から社会的側面への施策が必要ではないかということで「日本をユニバーサル社会にしていく」ための法律を考えているわけです。社会全体を変えるにはこのユニバーサル社会形成促進基本法が必要であることを説得して了解を得ております。ゴールは見えてきたと受け止めています。


生まれ育った地域で生きていける政策を
堂本暁子千葉県知事

写真:堂本知事 千葉県では縦割りの行政のなかでみるのではなく一人ひとりの側からみようと、当事者の方々がプランづくりを進めています。たとえば地域福祉支援計画では障害者などの当事者や現場で働いている人などが中心になって住民参加によって計画をつきうろうとしいます。しかしその結果、国のシステムと合わないところが出ています。こうしたなかで今、地方から変えようという動きが大きくなっきています。千葉では健康福祉千葉特区の申請をして、福祉施設に横断的に取り組む事業希望者を募ったところ予想以上の事業者が手を揚げています。しかし、一人暮らしの高齢者が慣れ親しんだ自分の住んでいるところから遠い施設に通わなくても済むようなことは特区においてもみとめらていません。ユニバーサル社会は一人ひとりの都合が認められるということであり、ぜひ、国会ではユニバーサル社会のための法律をつくっていただき、私たち地方自治体では個別の市町村や県の都合を国に上げていくサンドイッチ方式で国の制度を変えていきたいと考えています。

 これからの方向は人と人の関係をいかによいものにしていくかにあります。生まれ育った地域で生きていけるように考えていく事が大切です。


障害者自身が意識改革の掛け橋に
高梨憲司社会福祉法人愛光専務理事

写真:高梨憲司理事 ADA法の基本的な考え方は障害者の差別禁止を公民権として考えていこうというものだと理解しています。アメリカは日本と違い、いい意味での個人主義が根付いています。日本の場合は法的な整備とともに国民一人ひとりの意識改革を合わせて行っていかないと難しい面があると考えています。私自身、視覚障害者ですが、たとえば障害者の場合は数が少ないので当たり前の権利を要求したとしてもなかなか社会のなかで生きていけない。こちらが社会に適応せざるを得ないのが実情です。障害者自身もたんに要求するだけでなく国民の意識を変えるために自分でできることを行って障害者自身が社会の意識改革の架け橋になることが必要です。

 障害者への施設づくりは、施設をつくるだけでは十分ではありません。障害者が施設から戻ると、孤独な生活になるおそれがあります。地域の支援、心の交流があってはじめて地域生活ができるわけです。たとえば少子化で学校には空き教室が増えていますが、この空き教室が高齢者、障害者の集う場に使用できないのか。一般の家庭でも世帯人員が減少してきておりますが、大きな家に夫婦だけ住んでいるところであれば空いた部屋を地域の人が集る場所にさせていただくことができるのではないでしょうか。身近なところを活用してお互いが当たり前に語り合える社会ができあがっていけばと考えます。


社会参加に不可欠な介助犬の活用を
山口亞紀彦千葉市職員

写真:山口亜紀彦千葉市職員 私は千葉市の障害者相談センターで介助犬のオリーブと一諸に仕事をしています。介助犬を希望したのは平成十年十一月でしたが、実際にオリーブと生活を始めたのは平成十三年十一月でした。千葉市の受け入れにこれだけ時間がかかったのは、何よりも「前例がない」ということによるものです。日本介助犬協会からの説明で市長からOKが出ましたが、現在の私にとって介助犬は体の一部であり、なくてはならないものになっています。

 昨年5月に身体障害者補助犬法が国会で可決されて十月にこの法律が施行され、介助犬は盲導犬、聴導犬とともに公共機関、交通機関での利用が可能となりました。今年十月からは不特定多数が利用する病院、飲食店での利用ができるようになります。すでに千頭以上活躍しているアメリカの場合、介助犬の取扱いはADA法で定められています。日本も早くこのようになることを望んでいます。

竹中ナミ社会福祉法人プロップステーション理事長

写真:竹中ナミ理事長 今年六月にアメリカの教育省を訪れたとき、スタッフには全盲、身体障害者の方が大勢いて、介助犬と一諸の教師もいました。こうした方々が働いているのもADA法をはじめとする障害者のための法律があるからだということを再認識しました。

 

 


チャレンジド:(challenged)は、「チャレンジすべき課題や才能を与えられた人」という意味が込められている新しい英語。アメリカでは、仕事をもち、積極的に社会参加していこうと前向きな障害者のことを指してチャレンジドと呼んでいる。


[up] [next] [previous]



プロップのトップページへ

TOPページへ