日本経済新聞(夕刊) 2003年11月17日より転載

     
  神戸経済特集  
 
企業も社会貢献
地域とのつながり重視
 
 

 

打合せの写真
フェリシモは小規模授産施設のスタッフに商品企画のノウハウも伝授する(神戸市の友が丘作業所)


 「パウンドケーキの試作品ができました」「箱はもう少し大きいのがいいですね」。神戸市須磨区にある小規模授産施設の友が丘作業所。障害者のスタッフが作ったばかりの焼きたてのパウンドケーキを前にして、カタログ通販のフェリシモ(神戸市)の担当者と同作業所の職員が商品化について意見を交わす。

 フェリシモは6月から社会福祉法人のプロップ・ステーション(同)や兵庫県などと連携、障害者が働く授産施設などの製品をカタログで販売する「チャレンジド・クリエイティブ・プロジェクト」を始めた。催事販売など販路に限られていた障害者の製品を全国の消費者に届ける試みだ。

 これまでに兵庫県内の13施設で作られたクッキーと織物製品を販売してきた。友が丘作業所のケーキは、12月に全国の郵便局で配布されるカタログで販売される予定だ。同作業所を運営する社会福祉法人、クローバーの会の神田絹枝理事は「多くの人に製品を買ってもらえるためスタッフのやる気も高まっている」と話す。

 6,400人を超える犠牲者を出した1995年の阪神大震災を機に、地域社会との結び付きを見直し、社会貢献を強める動きが神戸市内や周辺の企業で強まっている。

 但陽信用金庫(兵庫県加古川市)は社内に特定非営利活動法人(NPO法人)の但陽ボランティアセンターを設け、1日に約4人の職員がボランティアで身体障害者の移送サービスや独居高齢者見守り活動に取り組む。

 震災後に本社を会社発祥の地である神戸市長田区に戻した三ツ星ベルトは、地域住民にも開放するコミュニティーレストランを運営するほか、地域の団体と連携した「たちばたまつり」を開催するなど、本社周辺の地域貢献を展開する。

 神戸商科大学の加藤恵正教授は「震災の経験から地域とのかかわり方を見直した神戸の企業は多い」と話す。加藤教授は、こうした地域貢献が企業の信用力向上にもつながっていると指摘する。「企業の社会的責任」(CSR)の重要性が企業社会で高まりを見せる中、神戸で活発化する地域貢献の取り組みは全国の企業の参考になりそうだ。