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千葉日報新聞 2003年9月18日より転載

     
  第9回チャレンジド・ジャパン・フォーラム2003
国際会議inちば
 
 
地域の力で
ユニバーサル社会実現へ
 
 

 

 「千葉からユニバーサルの風を」をテーマとして8月21、22の両日、千葉市美浜区の幕張メッセ国際会議場で「第9回チャレンジド・ジャパン・フォーラム2003国際会議inちば」=同フォーラム実行委員会(CJF)など主催、内閣府、千葉県など後援=が開催された。IT(情報技術)をキーワードに「チャレンジド(障害者)を納税者にできる日本」を目指すCJFには、堂本暁子知事をはじめとする首長、関係する民間諸団体、行政関係者といった国内からの参加者にとどまらず、福祉先進国を中心とした海外からの出席もあり、それぞれの立場から活発に意見を交換した。障害者就労の促進とユニバーサル社会の実現に積極的な首長、大学教授らによるセッションで堂本知事は「千葉県は障害者雇用元年だ」と今後の推進に意欲を示しながら「健康福祉千葉方式」などの施策について語り、既製服型の福祉から一人ひとりのニーズに合致したオーダーメード型の福祉への転換の重要性を強調、多くの賛同を得ていた。また、県内におけるチャレンジドの活動事例では、県立四街道養護学校卒業生がパソコンを駆使して仕事に取り組む姿や障害者が働く様子などが報告され、参加者は「すべての人が持てる力を発揮して支え合うユニバーサル社会」に向けて決意を新たにしていた。そのほか、米国・国防総省とのインターネットによる中継や北欧の福祉先進国・スウェーデンからの発表、障害者就労に関する展示もあり充実したフォーラムとなった。

(順不同・敬称略)


◇ チャレンジドとは
 自立と社会参加を目指す障害者のことをいう。
◇ チャレンジド・ジャパン・フォーラムとは
 神戸市に本部のある社会福祉法人プロップ・ステーションが「チャレンジドを納税者にできる日本」を目指し1996年から開催しているもので、9回目の千葉大会はCJF実行委員会(実行委員長・秋山岩生ふぁっとえばー代表)とプロップ・ステーションが共催した。

 

堂本知事開会のあいさつ
堂本千葉県知事の写真


 全国各地、そして外国から、ようこそ千葉県にお越しくださいました。
 千葉県で、「チャレンジド・ジャパン・フォーラム」を開催できますことは、大きな喜びです。
 今、日本は大きく変わっています。
 高度経済成長の中で経済的価値が最優先される時代から、人間らしく生きるという新しい社会を築いていく時代に入りつつあります。
 このような時代に使われるキーワードは「ユニバーサル」です。一人ひとりのことを大事にしようというとても大きな意味を持つ言葉です。21世紀になって、ユニバーサル社会の概念も、より深まり、育っています。
 私が今、一番進めたいと思っていることは、一人ひとりの県民が、障害があろうがなかろうが、みんな自分らしく、自分で責任を果たす社会づくりです。これを、私たちは「千葉主権の確立」と表現しています。
 私はチャレンジという言葉がとても好きです。障害を持っていても、それを乗り越え、挑戦して、納税者になっていただきたいと思います。
 年を取れば、誰でもいろいろと不自由になります。こうした意味では、誰もがチャレンジドです。そして、すべての人がチャレンジドの気持ちを持ったときに、本当のユニバーサル社会が実現するでしょう。
 千葉県の600万県民を代表いたしまして、皆様を歓迎申し上げます。

 

自己紹介


 堂本暁子 世界から日本全国から、そして県内各地からようこそお集まりくださいました。千葉県は今年を障害者雇用元年と位置づけておりまして、その年にこのフォーラムを開催できたことをうれしく思っています。このフォーラムには不思議な力があります。チャレンジドの方から、たくさんの光をいただくことで、参加しているみなさんが元気になれる、こんなフォーラムは、ほかにはないと思います。

 

堂本千葉県知事の写真
手作り福祉に転換
千葉県知事
堂本 暁子


 増田寛也 昨年のCJFの会議は盛岡で行われ主催する立場でした。地域の障害者団体やサポートする人々の姿を目の当たりにして、この会議の持っている熱気や威力をまざまざと見せつけられた気がしており、今回もその熱気を持ち帰りたいと思っています。これからの発展を期待しています。

 

増田岩手県知事の写真
福祉施設で障害者雇用
岩手県知事
増田 寛也


 浅野史郎 昨日の夕方に一度おじゃましましたが仙台に戻って仕事を済ませて再びやって来ました。第4回からこの会議に出ていますが、出席者がおもしろいので、ここでセッションすると帰るときには違う自分になっている気がします。

浅野宮城県知事の写真
共生型グループホーム設置
宮城県知事
浅野 史郎


 木村良樹 日本は市民中心の社会にならねばならないと常々思っております。国全体が自信を失っている中、成熟した市民の活動がこれだけ大規模に進んでいることは大きな希望です。和歌山県でも今年からチャレンジドということを施策に入れています。ここで学んだことを地域で生かしたいと思います。

木村和歌山県知事の写真
個性に合わせ生活できる社会
和歌山県知事
木村 良樹


 井戸敏三 阪神淡路大震災10周年に際して、次回のCJFを地元で開催したいとの話があり、喜んで参加しました。チャレンジド、障害者の在宅を前向きに訴えているのがCJFのエネルギーだと思っております。2005年の早い時期に開催させてもらいます。

井戸兵庫県知事の写真
大企業の雇用対策推進
兵庫県知事
井戸 敏三


 矢田立郎 就任以来、政策に関して提言をいろいろな人からいただいております。その一人の竹中さんから今回の会議にも誘われ参加しました。神戸でチャレンジド・クリエイティブ・プロジェクト(CCP)を関係者とともに立ち上げたことを大変喜んでいます。

矢田神戸市長の写真
支え合いの重要性痛感
神戸市長
矢田 立郎


 北川正恭 最近までシアトルに行っていましたが、現地の自治会は市役所に文句を言う存在で日本の自治会とは違いました。自分の町は自分で守ろうとしています。チャレンジドや福祉にも言えます。自分たちの手で取り組んでいく働きが起こらないと日本のバリアフリー社会は進展しないと思います。

北川教授の写真
縦割りを横断、分権に
早稲田大学大学院教授
北川 正恭

 

竹中ナミの写真
コーディネーター
社会福祉法人
プロップ・ステーション理事長授

竹中 ナミ
 
ユニバーサル社会の方向性


 竹中 「ユニバーサルな日本創造は地域から」のテーマに沿って、地域から創造していくには何ができるでしょうか。みなさんの考えるユニバーサルの方向性を聞かせてください。

 矢田 神戸の場合は市民の福祉を守る条例があり計画に沿って施策を進めています。雇用、在宅問題、医療などを含めた福祉です。この概念をまちづくりに生かしています。震災からの復興でも緊急整備の形を取り、まちづくりの中でユニバーサルデザインを意識しております。地震で大きな被害を受けた永田地域が最もユニバーサルデザインの取り組みが進んでいます。
 また、ユニバーサルデザイン大賞というものを行いたいと思っています。これにより、例えば空き店舗を利用して障害者の取り組みを紹介するなど地に足がついた活動が飛躍していくと思います。

 井戸 兵庫県の有効求人倍率が0.5と健常者の雇用が厳しい現状で、障害者の雇用をどう確保していくかが最大の課題です。特に大企業の法定雇用率未達成が目に付きます。中小企業は頑張っているという実態もあり、大企業での雇用対策を促進しなければならず、県の独自施策も検討しています。また、小規模作業所や授産施設の充実も大切です。製品の販路を拡大し評価が得られれば商品が売れるようになり、そこで働く人々の職が安定し広がりを持てます。そのためには質や能力を上げねばなりません。
 自らが働き生活に充実感を持つのがチャレンジドの精神です。その精神を生かせる環境整備を一生懸命に応援します。

 木村 障害者福祉、チャレンジドの福祉がこれからも進んでいくことを願っていますが、21世紀が必ずしもバラ色とは言えないでしょう。デフレが恒常化し、景気が回復しても一部の人だけがもうかるのでは機会も結果も平等ではありません。
 こうしたデフレ社会では、今まで以上に福祉の心で「買ってあげている」ということになり、それが重荷となってうまくいかなくなる可能性があります。ですからチャレンジドの方々が作る物にも付加価値の高いものが求められます。21世紀の価値観が自由主義的な強者の論理になりつつあることを踏まえた上で、チャレンジドの運動を守る施策が大事です。

 浅野 現在の日本では多くの知的障害者が施設の中で人生を送っています。入所させる側はそれで幸福だと信じ込んでおり、入所者もそれで入っています。宮城県では宮城県福祉事業団の理事長が知的障害者施設の解体宣言を行いました。県では知的障害者が地域で生活できるような施策を行おうとしており、その前段として解体宣言があったのです。
 昨年度県では、若手職員から新しい事業を提案してもらうプロジェクトMという制度を実施したところ、共生型グループホームの提案が採用されました。高齢者や知的障害者、障害者が一緒に生活する施設が10月にオープンします。

 増田 岩手県では授産施設や福祉作業所に発注する仕事の量的な拡大を目指していきます。行政機関として、これらの施設に率先して業務を発注する仕組みを作ることにしています。入札制度などいろいろなハードルがあり壁が厚いのも現実ですが推進します。
 また、障害者雇用もあらゆる点で進めていかねばなりません。その一環として障害者福祉施設での障害者の雇用を目指します。同じような障害を持っている人が障害者のケアに従事することから新たなものが生まれてくるのでは、と考えています。以上の二点を今年度の重点として極めることにしています。

 堂本 千葉県では県民参加の県政作りを掲げています。福祉施策で「標準ではなく一人ひとりのことを大切にしよう」と訴えたところ、職員から次のような疑問点が出て来ました。「個人のニーズを軽視した既製服型の健康福祉になっていないだろうか」などの5点です。
 既製服という言葉の持つ意味をかみしめていますが、今の時代に求められているのは既製服ではなくてオーダーメードなのです。オーダーメードというと洋服では高いイメージとなりますが手作りと言い換えることができます。その手作りを実践していくのが健康福祉千葉方式です。障害者の方にも来てもらい意見を出し合いながら完成させようとしているのが県の地域福祉支援計画です。計画の中には「地域の福祉力」とあります。福祉力と書いて「ちから」と読ませます。
 県内では、既製服ではなく「安くてかまわないから、こうしたい」とする福祉づくりに障害者の一人ひとりの取り組みが始まっています。

 6人から個性あふれるお話をいただきました。北川さんも何かお話ください。

 北川 20世紀はものを細密化、極小化する時代で、その結果できあがったのが縦割り行政だったと思います。これにより総合的に対応すべき医療、健康、福祉が組織、予算、法律を異にする状態になりました。これをユニバーサルな状態にするにはすべてを地域に任せた方が良いと思います。21世紀は、お互いができることに自由に取り組めるようなユニバーサル社会を作っていくことが必要で、縦割り集権から横断的・総合的分権への移行が重要です。
 三重県に全国一の高齢化率の村があります。若い人が励ましに行って逆に励まされるようです。これは地域がユニバーサル化されているためでしょう。

 

会場の写真

「第9回チャレンジド・ジャパン・フォーラム」では、「千葉からユニバーサルの風を」をテーマに国内外から多数が参加。セッション4では、ユニバーサル社会の実現に積極的な堂本知事をはじめとする首長らが活発に意見交換した=幕張メッセ国際会議場

 

チャレンジド・クリエイティブ・プロジェクトとは


 チャレンジド・クリエイティブ・プロジェクト(CCP)は兵庫県、神戸市、(株)フェリシモ、社会福祉法人プロップ・ステーションの合同プロジェクト。兵庫県や神戸市にある小規模作業所や授産施設での商品を品質・デザインの向上を図りながらカタログやインターネットで全国に販売していく試み。

 CCPとはどういうものなのか、全面的に支援していただいているフェリシモの矢崎さんに説明をお願いします。

フェリシモ代表取締役社長矢崎和彦の写真
(株)フェリシモ代表取締役社長
矢崎 和彦

 矢崎 商品を日本中の人に買ってもらうビジネス上の流れに、チャレンジドを合わせて少しだけで工夫しただけで特別なことはしていません。また、社会貢献のプロジェクトではなく、普通のビジネスと同様に収益が上がる仕組みにしなければなりません。そのためには、商品の質が評価されるものを作っていかねばなりません。(CCPの商品のぐるぐるうずまきクッキーは)おいしくなければならず、商品の質が評価されるものを作っていきたいと思います。チャレンジドの方々は全国にいますので、ノウハウを積み重ね、仕組みが
確立されたら全国の人たちとともにプロジェクトを進めていきたいと思います。

 浅野 利益の見通しや値段の決定方法、クオリティーコントロールについて教えてください。

 矢崎 儲かっているかというと、まだですがあと2、3カ月で利益の見通しが立つでしょう。値決めは市場価値と仕入コストから決めています。また、品質は規格に基づいて維持しており妥協はしておりません。

 木村 自立ということでは、チャレンジドの製品が流通経路に乗っていくことが重要で、インターネットでの販売も良いのでは。クッキーは定番商品と言えるので、人々がビックリするような物のクリエイトも重要だと思います。

 堂本 一言を言わせていただきます。素朴な味わいでとってもおいしいクッキーですね。

 矢田 CCPは革命だと思っております。最初の大きな一歩で、多くの人々にこれを伝えていきたいと思っています。

 井戸 授産施設での製品をいかに売り込み、理解してもらうかに当たり「バザーだけではだめだ」の発想から生まれたのがCCPです。厳しい品質管理が特徴です。同情は禁物で市場に受け入れてもらえる商品を出していかねばなりません。カタログ販売をインターネットに乗せる準備を進めています。また、作り手に元気が出て励みとなる効果も期待しています。

 

ビデオ参加・清原三鷹市長
三鷹市長
 清原 慶子


 昨年まで副座長として直接かかわってまいりましたが、今回は公務と重なり、残念ながらビデオでの参加となります。

 「チャレンジドを納税者に」の精神は、誰もが平等に、生きる力と社会に果たす役割を共に発揮すること。私は、地域のすべての人が人生を有意義に無理なく、さらに障害のある人とない人が一緒に働くまちづくりを進みたいと思っています。

 ユニバーサルなまちづくりの創造は地域、市町村から、そして行政だけでなく市民一人ひとりの参画によって実現されます。活発な議論を期待しております。

 

ユニバーサル社会の実現に向けて


 ユニバーサルということを踏まえて、最後にこれを言いたいということがありましたら、お話ください。

チャレンジドや福祉の先進地でもある米国・スウェーデンの報告に熱心に聞き入る参加者

 堂本 ユニバーサルという言葉について、みんなで考えていかねばならないと考えております。ユニバーサルとは、さまざまな障壁を取り除いていくことだと思います。それによってあらゆる可能性が際限なく広がっていくと思います。これまでは行政や大学教授といった専門家が可能性を探っていましたが、これからは当事者が担っていくべきです。福祉の専門家が作っていた既製服を脱ぎ捨て、障害者の方々が自分で声を出しながら作るオーダーメードの服が大切です。ここを原点にして私たちも一緒に施策に取り組んでいきます。
 また、千葉県では障害者就業支援キャリアセンターが間もなく始動する予定です。

 増田 福祉の分野ではまだまだ改革が必要です。ユニバーサル社会が必要とされる理由をみんなで考えれば答えが出てくるでしょう。一方では厳しい財政事情も現実です。その状況下では一点突破の考え方もあり、障害者施設での障害者雇用などに重点を置き、県として可能な範囲でユニバーサル社会の実現に取り組んでいきます。

 浅野 雇用の前に生活があり、地域での生活を保障していきます。共生型グループホームを県内にたくさん設置していきます。中核施設とサテライト施設による地域ケアホームです。福祉の枠組みではなく、県の緊急経済再生戦略の中に位置づけており、サービスを提供する側には福祉関係者以外からも参加してもらいます。

 木村 和歌山県では緑の雇用という事業があります。都会、地方、山間部ということを取り除いた大きな意味でのユニバーサルデザインです。社会全体を流動化し、だれでもどこでも楽しく、自分の個性に合わせて生活できる社会がユニバーサルデザインで、チャレンジドや障害者にとって暮らしやすい社会につながるでしょう。

 井戸 ユニバーサル社会はハンディを乗り越え自立することを、どのように実現するかということでしょう。その一方では、普通の社会が普通の形で受け入れることも重要です。兵庫県では障害者への声かけ運動を展開しています。05年にCJFを神戸市と行うが、これまでを総点検し、節目にふさわしい大会となるよう協力していきます。

 矢田 神戸市でも自分たちの地域のことは自分たちで取り組むという動きがあり、行政としても地域が主体となったまちづくりを展開していくことにしています。震災でお互いが支え合い助け合うことの重要性が身にしみて分かっているのが神戸です。ユニバーサル社会が一層発展することを願っています。

 北川 チャレンジドやユニバーサルという言葉は思想を持っています。ユニバーサルという言葉が、きちんと人々に認知され堂々と歩み出すためには10回目のCJFがターニングポイントと言えるでしょう。障害者だけでなく高齢者やあらゆる人たちと連携することでユニバーサル社会がさらに拡大していくよう期待しています。

 

活動事例報告
千葉からの発信・チャレンジドが千葉を変える


 「千葉からの発信・チャレンジドが千葉を変える」と題して、西嶋美那子・社団法人日本経済団体連合会障害者雇用アドバイザーをコーディネーターに、5人がそれぞれの活動を発表した。

 県立四街道養護学校、高見沢智子教諭は卒業生が仕事に取り組む「ワークショップまごころ」の活動を紹介した。「まごころ」の活動は火曜日から木曜日の午前10時から11時半で卒業生が難病と戦いながら、名刺印刷、カレンダー、ホームページ、ポスター製作を行っており、コンピューターグラフィックスの製作では高い評価を得ている。また、今年はPTA広報紙の作成を請け負うなど仕事の幅は広がっている。高見沢教諭は「まごころのメンバーは活動が生きがいとなっている。メンバーはNPO法人を取得し独立を考えており、一日も早く給料を手にしたいと思っているだろう」と期待感を明らかにした。

 社会福祉法人「あかね」の福祉情報センター所長、金子楓さんは全国的に珍しい視覚障害者が中心となった通所授産施設「ワークアイ・船橋」の活動を紹介した。主な業務は研修会・講習会・会議などのテープおこし、点字文書・点字名刺作成の業務など。県からは、視覚障害者のためのIT講習会の実施を受託している。2002年度は年間600人の視覚障害者が講習会に参加し、パソコンの使い方をマスターしている。障害者が知識、能力を生かして社会で活躍できるよう手助けしており「仕事を通じて企業への雇用のパイプ役を果た
していきたい。行政、企業、自分たちの力で風を起こし一日も早く納税者となっていきたい」と決意を述べた。

 (株)クレセントの古閑睦朗代表取締役は、「障害者と健常者の意思伝達にはITが最も有効。音声でパソコンを動かすことができれば、利用者は増大する」と語り、自社が手がける音声認識によるパソコン操作について語った。君津市、富津市のホームページを音声化している古閑氏は、県の「ちばウェル・ナビ」(社会福祉施設等の情報ページ)の音声によるカーソル移動を実演。「システム設計や音声認識のための言葉の登録では、雇用創出が期待できるだろう。自社の仕事を通じてチャレンジドの就労を支援していきたい」と話した。

 地元企業の事例発表では、(株)舞浜ビジネスサービスと(株)共進の2社が報告した。

 舞浜ビジネスサービスは、オリエンタルランドの特例子会社で県内に3社ある特例子会社の1社。従業員170人のうち122人が知的・身体障害者で、オリエンタルランドからナプキン折り、食器洗浄、花キ栽培といった業務を請け負っている。石井明彦社長は「バックステージでの仕事の開拓は進んでいるが、今後はオンステージでの業務にも進出を図っていきたい。障害者はいろいろな仕事ができるので環境を整えていかねば」と意欲を語った。特例子会社のメリットについては「きめ細かいサービスや障害の特性、能力に合った仕事に柔軟な対応ができる」と述べた。

 障害者と仕事をするようになって30年という家電リサイクル業の共進では、グループ会社全体で約30人の障害者が働いている。草尾敦代表取締役は、リサイクルセンターにおける空きビン・カンの分別作業で、知的障害者の持つ能力について認識を改めたことや家電分解の作業状況、養鶏場での仕事を紹介。「リサイクル業界は労働集約業界。少子高齢化社会でもあり、障害者の方々はかけがえのないパートナーだ。健常者の補助ではダメで、障害者がメーンとなる企業環境を心掛けたい」と強調した。

千葉からの発信の出席者の写真
「チャレンジドが千葉を変える」と題して、それぞれの取り組みを発表する「千葉からの発信」の出席者

 

県が取り組むチャレンジド支援の施策


 チャレンジドの就労支援の一環として、県は今年度、新たに障害者就業支援キャリアセンターを設置するほか、企業が障害者法定雇用率を達成する有効な方法としての特例子会社の設置を進めるため促進員を配置する。また、障害者就業支援戦略会議を立ち上げており、就業希望の障害者や事業主などの期待や要望にこたえていく。

特例子会社の説明図

 ◇ 障害者就業支援キャリアセンター 8人のジョブコーチ(職業指導員)とコーディネーター1人により新たな職場開拓を行うと同時に、就労希望のチャレンジドに必要に応じてマンツーマンで能力・特性に合った支援を展開していく。また、職場に適応できない場合や離職による再就職を支援する事業主や他の従業員へのアドバイスを行うなど就労・障害者雇用に関する総合的なサービスを展開する。

 ◇ 特例子会社の設置促進 特例子会社設置促進員2人を配置する。促進員は法定雇用率(1.8%)の未達成企業を個別に訪問し特例子会社制度活用のメリット、実際に障害者を雇用する際のアドバイス、対象となる業務の検討、特例子会社設立への助言、障害者雇用に対する各種助成制度などを説明。理解を深めてもらう。また、企業トップなどを対象のセミナーや見学会等を催し設立を検討している企業を具体的にサポートしていく。

 ◇ 障害者就業支援戦略会議 障害者の就業支援には行政機関に限らず幅広い支援者や受け入れ企業の協力など総合的な支援ネットワークが必要不可欠なことから、障害者雇用に理解の深い企業経営者、NPOなど専門知識を持つ人をメンバーとした戦略会議を設置。県として今後の障害者雇用施策・就労支援策を展開すべきか検討するとともに、県内ネットワークの構築を目指し具体的な提案を行うことにしている。

 これら就労支援施策のほか、県では福祉的就労を応援するため、授産施設・福祉作業所への補助、日常生活を手助けするグループホーム、生活ホームの施設運営への補助、障害者高等技術専門校における職業訓練、盲・聾・養護学校における職業教育にも取り組んでいる。

 

県内の障害者数と事業所における雇用状況
障害者数のグラフ


 県内の障害者数は02年度現在、身体障害者13万1,707人、知的障害者2万2,067人、精神障害者4万5,308人の合計19万9,082人となる。

 身体障害者手帳を持つ人のうち就労ができると想定される18歳以上は12万7,731人で全体の97.0%だが、65歳以上の障害者を除いた場合は5万5,566人、42.2%になる。知的障害者では18歳以上が1万6,113人、73.0%。65歳以上を除いても1万5,495人、70.0%の人が就労できると考えられる。入院中の人を除いた精神障害者のうち就労できると考えられる人(通院医療費公費負担制度を受ける20歳以上)は2万1,559人で94.3%に達する。65歳以上を除いた場合は2万3,145人、85.4%となる。

 障害者の就業率を見た場合、今年3月末現在の千葉労働局の障害者求職登録では1万3,867人の登録者(就業希望者)のうち785人、52%が就業中。

 一方、企業における障害者雇用率に目を転じると、昨年6月末現在の障害者雇用率は、法定雇用率の1.8%が適用される56人以上の常用従業員を有する1,290企業のうち全体の45%に当たる584企業が達成しているに過ぎない。1,290企業の常用労働者29万8,783人のうちの障害者雇用数は1.42%の4,241人で、前年度に比べて0.01ポイント減少している。