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公明新聞 2003年8月19日より転載

     
 

主 張

 
 
ユニバーサル社会めざして
 
 
障害者の雇用を促進する法制を
 
 

 


NPOから学べ

 障害を持つ人たちの就労を促進するNPO「プロップ・ステーション」(竹中ナミ理事長)のフォーラムが明後21日から2日間、千葉県の幕張メッセで開かれる。

 プロップ・ステーションは、IT(情報技術)を活用することで、障害を持つ人の能力を引き出し、それを就労に結び付ける運動を展開し、全国各地で共感を呼んでいる。フォーラムは、その運動を各地域に広げるため、自治体の招へいを受けて開かれるもので、今回は三重、岩手県などでの開催に続いて、9回目になる。

 プロップ・ステーションの運動が、なぜ注目されるのか。その理由の一つは、新しい時代の福祉の在り方を提示しているからだ。

 障害を持つ人は、福祉サービスを受ける“支えられる側”と決めつけられがちだ。しかし、職場のバリアフリー化などの環境さえ整えば、働き、納税し、“支える側”になれる人は多い。

 プロップ・ステーションでは、障害を持つ人を「挑戦すべき使命や課題を与えられた人々」という意味から、「チャレンジド」と呼び、「チャレンジドを納税者に」というスローガンを掲げている。

 障害を持つ人たちには「働きたい」という気持ちが強い。だれもが持てる力を発揮し、誇りをもって働ける「ユニバーサル社会」をつくる――。「納税者に〜」というスローガンには、こうした意味が込められている。

 現在、障害を持つ人を一定割合で雇うことを企業に義務付けた法定雇用率の制度がある。しかし、“何人雇わなければならない”という発想が先立ち、“この人は何ができるのか”という視点が欠けていないだろうか。

 雇用率という数字ではなく、個々人の力を評価し、それを引き出せる環境を積極的につくることが求められている。

 さらに、超高齢社会を展望した時、障害の有無、年齢、性別にかかわりなく、あらゆる人が、それぞれのスタイルで、多様な働き方ができるような社会にしなければいけない。

 プロップ・ステーションの活動は、こうした日本全体が直面している大きな課題を解決する方向性も示している。

 プロップ・ステーションが注目されるもう一つの理由は、ITの活用だ。パソコンは文章や画像の作成を容易にし、インターネットは在宅就労を可能にしている。

 こうした時代の到来を、いち早くキャッチしたのが竹中ナミ理事長だ。10年前に、障害を持つ人のためのパソコン講座を始め、多くの人の就労を実現してきた。

日本版のADAを

 障害を持つ人の雇用を促進するためには、そのバックボーンとなる制度が必要だ。

 米国には、障害を持つ人への差別を禁止し、社会参加の機会平等を保障する「障害を持つアメリカ人法(ADA)」がある。

 公明党は、日本版ADAの制定を提言した。現在は、連立与党のプロジェクト・チームとして、「ユニバーサル社会形成推進基本法」(日本版ADA、仮称)の制定に取り組んでいる。浜四津敏子代表代行は、「憲法の『法の下の平等』の理念が反映された社会の方向性を示す質の高い基本法が必要」と考えている。21世紀の共生社会の実現へ、同法の早期制定に期待が高まっている。