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産経新聞 2003年7月21日より転載 |
義手、義足の弁護士
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私は人に会うことが大好きで「一生の間に自分がどんな人と出会えるか」っていうのが人生の目的の一つやったりするんですが、6月にワシントンDCでお会いしたジョン・ケンプさんには、ほんまにもう胸がふるえました。 「慈愛に満ちた」という表現がぴったりの深いブルーの瞳を見つめながらお話を聞いていると、胸の中で激しく揺れていたブランコが徐々にゆるやかな揺れに戻っていくような感覚。このジョンさんが、今年8月21、22日に千葉市の幕張国際会議場で開催する「チャレンジド・ジャパン・フォーラム(CJF)」に出席してくださることになり、メールで毎日のように来日に向けた打ち合わせをしています。ジョンさんは52歳で職業は弁護士。40年前にケネディ大統領が「私はすべての障害者を納税者にしたい」と教書で語った時、すでに両手と両足を失っており、母親も亡くなっていたけど「誇りを持って生きるために、自分は納税者をめざそう」と決意したそうです。 当時のアメリカは人種差別が激しい時代でしたが、白人であるジョンさんは「障害を持つ自分の中にも人種差別意識がある」ことに気づき愕然(がくぜん)とし、「すべての人が誇りを持って生きられる社会にしたい」と感じて弁護士の道を目指したといいます。ジョンさんの両足は義足ですが「ハイテクに支えられた最高の義足なので満足している」そうです。義手は鉄のカギ。「こっちはまだ改良の余地がある」とか。「義手と義足の購入や定期的なメンテナンスで収入の大半が消えるんだよ」と苦笑いしながらも「弁護士の資格を取るための勉強が重度のチャレンジドにも保障されたアメリカの教育システムは、アメリカ人の誇りだ」と言いました。 ADA(障害をもつアメリカ人法)の成立にも大きな貢献をしたジョンさんには、CJFだけでなく「ユニバーサル社会形成与党プロジェクト・チーム」でも講演していただこうと思っています。
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