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マインドなら 2003年6月1日より転載

     
 

キクちゃんのボチボチいこか

 
 
チャレンジドスピリットで
ポジティブになる =1=
 
 

生活者の視点から

 
 

 


 キクポチがPC(パソコン)とIT(インターネット)を始めるきっかけとなったのは、平成10年頃。当時、無年金の運動をやっている北海道から福岡までの原告と支援者をITで結んで常にミーティングをしようという企画が持ち上がってから。

 そういう話にキクポチは困惑した。PCとITを我が家に導入して、果たして俺に使いこなせるのか?今でもPCは高価なものだが、5年前はもっと高かった。で、車いすの無年金仲間に 「PCどうするの?買うの?」と聞いてみた。すると平然と「すでにもうやってるよ」という返事が返ってきた。

 後で知ったことだけど、肢体障害者の世界ではPCならびにITというのは車いす同様、なくてはならない装具のひとつとなっていたのである。

 ITで全国会議をする話はトントン拍子に進んだ。俺は仕方なく、本当に仕方なく母に頭を下げた。「無年金の運動でPCいりますねん。どうかこうておくんなまし」母は怪訝そうに「こうたとしてお前に使いこなせるのんけ〜」と言いつつ、渋々買ってくれた。

 初めて買ったPCは『ウインドウズ98』。30万もする高価なものだった。もちろん無年金関係や『キクちやんのぼちぼちいこか』(萌文社) を作るときなどに大活躍してくれたのだが、俺の使い方が荒っぽかったのだろうか、3年目でクラッシュしてしまった。今現在は2代目となる『ウインドウズXP』を使っている。

 『マインドなら』や『ぜんかれん』『あみ』などへの原稿納品もネットだし、無年金HPの素材となるデジカメ画像なんかもネットで送るといった具合。

 今やPCとITは、キクボチになくてはならない両腕となっている。

 そんなある日、メールで情報が飛び込んできた。
『PCとIT技術で障害者が自立を目指すプロジェクト』が進んでおり、その社会福祉法人本部が六甲アイランドにあるという。

 キクボチは早速その法人のHPアドレスにアクセスした。 その名前は『プロップ・ステーション』。『プロップ』とは『支え合う』という意味らしいのだが、なによりも驚かされたのが、障害者を『チャレンジド(神から挑戦する権利を与えられた人)』と定義づけ、『チャレンジドを納税者に』という凄いスローガンを抱えて活動を展開しているのだ。

 HPを眺めていただけではらちがあかんわ。しかし、精神関係ではいささかのコネがあるキクボチも肢体障害者の世界にはコネがない。そこで『なっつ』の正田さんになんとかならんもんか」と相談をした。

 正田さんは神戸『御影倶楽部』の西川さんに連絡を取ってくれた。そして、西川さんと2〜3度直接メールのやり取りをした。

 「菊井さん、『プロップ』はかなり大きな団体で、竹中ナミ理事長はかなりの大物です。ですが、こちらが誠意を持って交渉すれば見学でき、お会いすることができるかも知れません」

 西川さんから連絡を待つこと2週間。つ、ついに『プロップ』側から返事が来た。竹中理事長は我々の希望日には所用で不在だけれども、見学はOKだとのこと。

 
インターネット・パソコンセミナーの様子
/プロップ(神戸)

 5月17日。すてつぶのスタッフ5人&西川さんを引き連れ、いや、連れて行ってもらつて『プロップ・ステーション神戸ネットワークセンター』へ。
 場所は神戸ファッションマートという高層テナントビルの一角をぶち抜いた空間にあった。

 どどーんとフロアに居並ぶPC群。「今からうちの活動の柱であるパソコンのスキルアップセミナーが始まります。ゆっくりと見ていってください」と鈴木重昭常務理事。

 時刻が来、セミナーが開始された。居並ぶPC群の前に車いすのチャレンジドたち。講師もなんと障害者だ。腕が使えないらしく、足でマウスを操作しながら受講生たちに教えて回っている。

 「講師の彼は、ここのセミナーの卒業生で、今はPCのプロとなっています。こうして今度は教える立場になっているんです」と鈴木さん。講師の方はみなさん障害者なのですかと聞いてみる。
「うちは健常者、障害者あまり関係なくPCのプロがボランティア講師として来てくれています。文字通りプロップですね」

 どういうこっちゃ?もうひとつつかめんぞって。そうだよね。

 我々が利用する『萌』とか『すてっぷ』のような『社会福祉法人』の施設は、補助金が県から降りたりする。

 ところが『プロップ』は『第2種社会福祉法人』で、施設を持たない。行う事業に対しも補助金は降りてはいない。根本的に違う。

 もう少し詳しく説明すると、肢体障害者の方もいろいろいらっしゃって、身障者用の車に乗って会社に通勤する人もいるにはいるが、大半の人たちは生活範囲が自宅であったり、施設のベットの上であったりする。

 それでも働きたいやないですか。誇りを持って人生を送りたいやないですか。当たり前のことだわな。

 そこで『肢体障害者の武器となるのはPCと技術ではないか、それを使っての在宅ワークではないか』と今のようにPCが発達していなかった1991年に竹中さんは考え、障害者向けのパソコンセミナーを柱とした『プロップ・ステーション』を設立する。

 『プロップ』のセミナーを修了した受講生は自宅に帰り、『プロップ』の在宅スタッフとなる。中には、絵本作家や、施設のベットで企業を立ち上げるなど様々だ。昨年は百件ものチャレンジドと企業とを結びつけたという。

 さぁて、次回は『プロップ』のメンバーから『ナミねぇ』と親しまれている竹中ナミ理事長とチャレンジドたちの魅力と挑戦を紹介する。

(つづく)