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産経新聞 2003年12月30日より転載

     
 
ノミねぇ爺との対談
 
 
 
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 親しい友人であり、文化庁文化部長の寺脇研さんのご紹介で、河合隼雄さんと対談の機会を得ました。河合さんは、ユング心理学の研究者として著名ですが、現在は文化庁長官として関西から発信する「文化力」を高める運動の先頭に立っておられます。

 私は「福祉に関する考え方はまさにその国の文化であり、チャレンジド(障害を持つ人)を単なる保護や救済の対象とする福祉観から、チャレンジドの可能性、すべての人の可能性を引き出す、という福祉観に日本の文化を変革したいと考えています!」とお話ししたところ、大変共感してくださいました。

 河合さんは対談の前にプロップの活動を紹介するビデオ映像なども見てくださり、「チャレンジドがITを駆使して、生き生きと学び、働く姿に感銘した。それにしても『チャレンジドを納税者にできる日本』という過激なスローガンは、関西のナミねぇならではやね!」と、大いに盛り上がりました。

 対談の中でお互いに考え方が一致したのは、「外国にいかに優れた福祉政策があっても、それをそのまままねするのではなく、日本の良いところを残したアレンジが必要」ということ。また「目に見える形の可能性」だけを追求することによって単なる弱肉強食に繋がらないよう、家族・地域・社会全体が連携して取り組む必要があり、日本はそのような土壌がある国だということを誇りにしたい、ということでした。

 アートや芸術だけではなく、人が人として生きるそのありようのすべてを「文化」ととらえる河合さんの哲学が、文化庁に新しい息吹を吹き込んでいるように感じました。立場は違っても、お互いに「文化」の担い手として頑張ろうとエール交換をして、対談会場を後にしましたが、頂いた著書に「ナミねぇへ ノミねぇ爺より」とサインをくださったユーモアに、吹き付ける北風も温かく感じたひとときでした。

 

竹中ナミ
(たけなか・なみ=プロップ・ステーション理事長)



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