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SPA 2003年6月24日号より転載

     
  GO! GO! PATRICK パワフルHIVポジティブ  
  チャレンジドって何?
関西の元気な姉さん、竹中ナミさんに会う = 1 =

 
 
世間がチャレンジドに
何の期待もしないのは、
福祉じゃない
 
 

 
障害者の自立支援を行う社会福祉法人プロップ・ステーション代表、竹中ナミさん。目指しているのは、施し与える福祉の充実ではなく、「自分の力が発揮できるチャンスの平等」
撮影/高橋聖人 イラスト/大寺 聡 構成/茅島奈緒深

今週の目的地 竹中ナミ
1948年、神戸市生まれ。24歳のとき、重症心身障害児の長女を授かったことから、療育のかたわら障害児医療・福祉・教育を独学する。手話通訳、身体障害者施設での介護など、ボランティア活動に長く関わり、1989年、障害者自立支援組織「メインストリーム協会」に参加。2年後、社会福祉法人「プロップ・ステーション」を設立し、この技術指導や在宅ワークのコーディネイトなどを行う。現在、同法人理事長。1999年、エイボン女性年度賞受賞、2002年総務大臣賞受賞。HP(http://www.prop.or.jp)

タイトル画像


パト プロップ・ステーションでは、障害を持つ人たちにコンピュータの技術指導をしているんだよね。それって、パソコン教室みたいな感じ?

ナミねぇ 大きな違いは、先生。チャレンジド自身が教えているから。

パト チャレンジド?

ナミねぇ 障害を持っている人を表すアメリカの新しい言葉で、“障害者”っていうマイナスイメージだらけの言葉より、前向きな感じがして。

パト うんうん! ボクも使っちゃおう!! で、そのチャレンジド自身が教えている話の続き。

ナミねぇ 言葉はうまくしゃべれないけど技術はすごい先生とか、手が動かないから足で教える先生とか。コースはグラフィックコース、ウェブマスター、ネットワーク管理など、そこらへんはまったくほかと一緒。技術指導だけやなしに、実際にプロとして働く場もつくってるよ。

パト 障害と一言で言っても、さまざまじゃん。コンピュータを勉強するには、最低これができないと難しいっていう基準はあるの?

ナミねぇ うーん、ほとんどないな。

パト 両手足がなくても?

ナミねぇ 両手足がない人もいるよ。ほら今はアタッチメントが発達しているから、ほとんどの障害を補える。まばたきだけでもコンピュータを動かせるしな。脳性麻痺で、体は固まってて指先しか動かせなくても、緻密な絵を描きはる人がおるよ。

パト へぇ〜。宇宙論で有名なホーキング博士だけが、特別な装置を使っているとばかり思っていたけど、そうじゃないんだね。じゃあ、授業に出るときは、自分のアタッチメントだけを持ってくればいいんだ。

ナミねぇ その通り。うちらは何でもしてあげますよっていうんじゃなしに、アンタがしたいなら利用してください、というスタンス。アタッチメントがどこで売っているかわからなければ、教える。でも、そこから先は自分でしてかないと、いつまでたっても強くなれへんと思うから。

パト 要するに、本人にやる気がないと何も始まらないってことね。じゃあ、やる気はあります、技術も身につけました、働きたいと思っているけど通勤はできませんっていう人の場合は、どうサポートするの?

ナミねぇ 必ずしも、仕事場へ行く必要はないでしょ。仕事が家に来てくれさえすれば。つまり、企業や自治体から確保したアウトソース先を振ってあげればいいわけ。私らは在宅ワークのコーディネイトもしていて、現にオンラインスタッフが何人もおる。通勤できなくても問題ない。

パト なるほどね。そのアウトソース先になる企業だけど、HIV/エイズ団体が企業と連動して何かしようってとき、たいてい外資系なのね。ナミねぇさんとこの場合はどう?

ナミねぇ うちは、技術指導のセミナーからして企業に支援してもらっていて、一番最初がアップルコンピュータで、次がNEC、それからマイクロソフトが参画してきて、松下も富士通もIBMも。IT企業はほとんどすべて入っているな。

パト ちょっと待った! すっごい有名な企業が参画してるじゃん!!

ナミねぇ とはいっても、プロとして働けるチャレンジドの数のほうが多くて、仕事の数が足りないのが実情。仕事さえあれば、働くチャレンジドの数は急増するはずなんだけど。問題なのは制度で、今、チャレンジドの労働に関する決まりは、法定雇用率の義務化しかない。それも、多くがチャレンジドを雇わず、罰金を払って済ませてる。なら、罰金の代わりに、アウトソーシングの1つ出してくださいって、なぁ。そういったことをはじめ、チャレンジドや何かしらの障害があって働けない人たちを取り巻く制度を変えてもらおうと今、国に働きかけてるところ。国会議員の有志の人たちとつるんでな。

パト なんか、プロップ・ステーションが掲げてる「チャレンジドを納税者にできる日本!」っていうスローガンに着々と近づいてる感じ!

ナミねぇ 理解者も増え、一種のムーブメントになりつつある予感してるから、面白くなるのはこれからやと思う。私は、世の中がチャレンジドに何の期待もしてないのは、福祉じゃないと思っている。彼らの中にも働きたいって思っている人は、ぎょうさんおって、スキルアップしていけば世の中に切り込んでいける。サクセスを掴めへんことない! とね。

 

バトとナミねぇの写真

「こんにちは」の挨拶と同時に、「ナミねぇって呼んでください」と言われたが、正しくヒヤリングできなかったパト。「えっ、ラムネさん?」と聞き返し、ナミねぇはややウケ。

ナミねぇさんの近著 「ラッキーウーマン〜マイナスこそプラスの種!」(飛鳥新社、定価1300円+税、発売中)


パト ところで、話はガラッと変わるけど、ナミねぇさんて、その昔、札付きのワルだったらしいじゃん!

ナミねぇ アハハハハッ! 小学生のころから家出が趣味で、アブサン飲んでタバコも吸って。15歳で同棲、高校除籍、16歳で結婚……etc。ま、今でも十分不良やけどな。

パト 不良ってキレイな人が多いけど、ナミねぇさんも若いころは相当キレイだったでしょ。

ナミねぇ ありがと! 面影ある?

パト うんうん! 体がバンバンッてしてて、きっと爆弾娘だったんだろうなって想像できる。

ナミねぇ 何や、面影って体形のことかい!              (次号へ続く)

 

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