日刊工業新聞 2001年2月21日 より転載

障害者が働きやすい社会に

プロップ・ステーション理事長 竹中ナミ氏に聞く

障害を持つ人たちを「チャレンジド」と呼び、『チャレンジドがコンピューターと情報通信を活用して自立と社会参加をめざし、彼らが納税できる日本に』―をスローガンに掲げて活動するプロップ・ステーション(神戸市東灘区向洋町中6の9、078−845−2263)。91年に草の根運動としてスタート、徐々に企業や行政からの協力も増加して在宅ワークの輪を広がっている。自らも重症心身障害者という娘を抱えた立場にあり、社会システムの変化の必要性を説く竹中ナミ理事長に聞いた。

(神戸支局長・馬木 治美)

社会システム変革急務 IT習得の機会広げたい


チャレンジドが納税できる日本に…と竹中さん

─随分、刺激的なスローガンですが、組織の生い立ちを。

「米国のケネディ大統領の就任演説にある言葉ですよ。今年29歳になる障害者の娘を授かった私にとって障害をマイナスのみでとらえるのでなく、前向きにと立ち上がったのは10年前。関西のオバさんなら許されるだろうと石を投げたら大きな波紋が広がって…」

「それと毎日思うことですが『働くことでだれかの役に立ちたい』という気持ちは人間ならではの素晴らしい感覚。日本がチャレンジドや高齢者が元気と誇りを持って働ける国になってほしい。娘のような働くという形で社会貢献できない人間も尊厳を持って存在できる国であってほしいとの願いからです。福祉的財源を維持していける国にするには、1人でも多くの人が身の丈に合った働き方で支える構造に社会システムが変化しないともちません」

─プロップの仕組みは。

「在宅チャレンジドがコンピューターを活用してワークができるよう技術習得の場を提供するとともに、企業や行政から仕事を受注してコーディネートする役割を担っている。当然、何ができる人、どれくらいできる人かを判断し、チャレンジドゆえに安く使われるということがないよう実力を評価している。第二種の法人で行政補助の対象外ですが、産官学民から協力の輪が広がっています」

「それと今、IT革命が言われているが、私たちの活動は科学技術の発達が可能にしてくれた。人間としての自己実現をコンピューターが可能にしてくれる。文系の人間、チャレンジドにもすごい道具の登場ですよ」

─今後の活動課題は。

「障害者の就労促進(法定雇用率は1.8%)で、在宅勤務も雇用率に換算をとお願いしている。幸い日経連に動いてもらっている。それと活動では実験モデルをつくり社会システムとして提案したい。やはり法制化を急いでもらいたい」

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