公明新聞 2000年12月13日より転載

イラスト探訪 政治の現場

チャレンジド(障害者)の就労めざしパソコン・セミナー

ITで障害者などの自立を支援するNPO「プロップ・ステーション」

浜四津代表代行らも訪問
「手をたずさえて新しい福祉社会へ」

いよいよ21世紀へのカウントダウンとなりました。新世紀はIT(情報技術)革命と叫ばれて、政府も力こぶを入れていますが、はたしてITは私たちの生活にどのように関わり、変革をもたらしてくれるのでしょうか。

そのヒントのひとつともいえる活動をしている団体がありました。現在各方面から注目を集めている神戸市のNPO(非営利組織)「プロップ・ステーション」(略称=プロップ、竹中ナミ理事長)がそれで、パソコンとインターネットを活用して障害者や高齢者の自立と就労を支援しようと1992年に設立。今年8月30日付の本紙ヤングホームページでもご紹介したので、覚えていらっしゃる読者も多いのでは。

先月の11日には、浜四津敏子代表代行ら一行が訪問。竹中理事長らから活動内容の説明を受け、意見交換。また、公明党のIT社会への戦略、福祉施策を紹介するなど、なごやかな中での視察だったのでした。

竹中ナミ理事長は、娘さんが重度の心身障害者として生まれたことがきっかけで、28年間にわたり、さまざまなチャレンジド(障害者)に出会い、活動してきたのでした。障害者といえば、それまで福祉施策の対象とされ、働くチャンスや方法を与えられることなく、保護の必要な人達として見られるだけでした。しかし、竹中さんがボランティア仲間と実施した全国の重度障害者の意識調査では、8割の人が働く意欲を訴え、その大半が「コンピューターが武器になる」と回答したのでした。それならば、パソコンを揃え、講師を募り、しっかりとパソコン技術の実力を身につけて仕事をしよう──という、従来の福祉の概念を超えた新しい発想からのものでした。竹中さんは早速、パソコンを寄付してくれる企業を探しました。ボランティアの講師も募集し、パソコン・セミナーをスタートさせたのでした。

その結果、セミナー卒業生はこれまで、延べ500人を数え、このうち約50人がパソコン関係の仕事に就くという成果をもたらしたのです。支援企業も今では大手50社以上にものぼります。竹中さんらの活動はこうして全国から注目されるまでになったのです。障害者も高齢者も能力や意欲のある人はたくさんいます。今までこうした支援システムが無かっただけなのでした。浜四津代行は先の視察の中で「コンピューター技術を活用してチャレンジドの自立と社会参画、特に就労を促進しようというのは、党の政策と一致します。手を携(たずさ)えて新しい福祉社会の構築を目指していきたい」と述べたように、行政の側からの支援も最重要な要素なのです。

プロップ・ステーションは98年には社会福祉法人の認可を受け、ますます、幅広い活動を展開しています。今年、大阪府から養護学校の情報教育を推進する事業の委託を受けました。しかし、限られた予算であるところから、竹中さんが支援企業に呼びかけたところ、約一億円もの機材が寄付をされ、府内の全養護学校にパソコン・ネットワークが整備されることになったそうです。

このプロップの素晴らしいところは、産・官・学・民の各界に協力者の輪が広がっているところといえます。

それも、原点は一人の女性の情熱と行動からだったわけで、どうやら21世紀は明るい世紀になりそうな予感です。ではまた。

(イラストと文 鶴岡ハツオ)

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