沖縄タイムス 2000年(平成12年)2月16日(水曜日) より転載

「できる」ことに目を

自立と就労支援で竹中ナミさん講演

「チャレンジド(障害者)」の自立と就労を支援する社会福祉法人「プロップ・ステーション」理事長の竹中ナミさんの講演会がこのほど、糸満市農村環境改善センターで開かれた。糸満市手をつなぐ親の会・療育委員会の主催。「チャレンジドを納税者にできる日本」をテーマに講演した竹中さんは、「『できない』ことより『できる』ことに目を向けたい。障害を持つ人も皆、誇らしく生きていける社会をつくりましょう」と呼び掛けた。

チャレンジド(障害者)も社会の構成員

「チャレンジド」という耳慣れない言葉。竹中さんは5年ほど前から、「障害者」を表す場合にこの言葉を用いるという。「チャレンジャー(挑戦者)」ではなく「チャレンジド」。 「神から挑戦することを与えられた人々」とその意味を説明し、「神から『挑戦』という課題を与えられ、それに立ち向かう力も備わっている人。その人に与えられた課題が大きければ大きいほど、立ち向かう力も大きく備わっていると、私は考えます」と述べた。

従来使われている「障害者」という言葉については「『差し障りがあって害がある者』 と読めてしまう。マイナスのイメージが強く、明るくポジティブなイメージがない」と指摘。「言葉1つで人間は力がわいてくる。元気になれる」。アメリカの知人に教えられて以来、「チャレンジド」という言葉を積極的に使うようにしているという。

竹中さんが「チャレンジド」の問題にかかわるようになったのは、1972年に誕生した長女が重症心身障害児だったことがきっかけだった。長女の療育を通し、さまざまな活動や人の出会いを経て91年、コンピューターを柱にチャレンジドの就労を支援する「プロッ プ・ステーション」を設立する。

「チャレンジドの自立に向けた活動をする中で、全国の重度の障害を持つ人たちにアンケートを取ったんです」。そのアンケートでは、仕事をしていない人の80%が『就職したい』と答え、その半数がコンピューター関係の仕事に就きたいと回答した。

同時に「関心はあるが仕事としてやれる自信がない」「就職できるレベルまで学べる場所がない」「どのくらい仕事ができるのか評価してくれる人がいない」「通勤ができないので在宅で仕事がしたい」などの意見が寄せられた。

「私自身はコンピューターのことは分からない。でも、アンケートの回答を見て、コンピューターは武器になる、不可能を可能とすることができると思った」と振り返り、その後の企業や行政を巻き込んだ活動を説明した。

今回の講演のタイトル「チャレンジドを納税者にできる日本」は、プロップ・ステーシ ョンのテーマでもある。「チャレンジドも社会の構成員として誇らしくありたい。納税者になる、ということは人としての誇りを取り戻すという意味なんです」

「福祉というと、上から下にしてあげるというイメージが強いが、それは障害のある人に期待をしていないから。あれもできない、これもできない、とマイナス面ばかり教えている。それが障害者の誇りを失わせている」。少しでもプラス面を見つけ、それを伸ばし ていくのがプロップ・ステーションの基本姿勢だ。

「チャレンジドたちは、これからの高齢社会の水先案内人」。地元の関西で「ナミねえ」 の愛称で親しまれている竹中さんは、関西弁を交わしながら客席に語り掛けるように講演。常に前向きなその生き方に、会場の「チャレンジド」やその家族らが熱心に耳を傾けた。

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