ふれあい21 1999年春号 ((財)ニッセイ聖隷健康福祉財団/ニッセイエデンの園情報誌) より転載

【元気倶楽部】

「われら、電脳使い。」

人生を充実させるための道具としてパソコンを利用する高齢者たち。

今やパソコンは若者だけの"たしなみ"ではありません。家庭でのパソコン利用が盛んになり、"電脳箱"の存在はずっと身近になりました。なかでも、マルチメディアに一番縁遠いと思われてきた高齢者の進出が増えています。積極的にパソコン教室に参加し、さまざまな楽しみを見出している高齢者たちを紹介します。

いちからパソコンに取り組む。
スクリーンをジッと見つめながら、先生の声に耳を傾けます。馴れない手でキーボードをたたく生徒さんの顔は、皆真剣そのものです。大阪市内で行われている障害者と高齢者を対象にした初級コンピュータ・セミナー(主催プロップ・ステーション)には、毎回、10数人の参加者とボランティアが顔を揃えます。「週1回半年間」のプログラムで、パソコンの基本操作からメール送信、ホームページ開設までを勉強するのです。

夫婦一緒にパソコンに向かう
「主人が勉強してから自分も、と考えていたんですが…」そう言って微笑む藤本久子さん(66)は、ご主人の潔さん(73)と仲良くご夫婦で受講しています。きっかけは新聞の告知。以前からパソコンに興味はありましたが、久子さんは左手が不自由。まずは主人に付き添って様子を見ることにしました。そこで、「どうせなら一緒に受けませんか?」と説得され、2人で通うことになりました。
将来は、アメリカに住む娘さんとメールのやりとりをするのが目標だとか。「メールだと写真も送れますし、電話やFAXで話すよりも便利ですよね」と期待が膨らみます。自宅にはまだパソコンはありません。操作技術を習得するだけでなく、どんな機種を購入するのか2人で話し合う時間も、パソコンによってもたらされる利点かもしれません。

自分の知識を生かしてボランティア
ボランティアとして参加している伊藤健次郎さん(76)は、セミナーの長老様。2年前からこのセミナーの手伝いを始め、1回も欠かさずに出席しています。進行についていけない生徒さんがいたら、そっと横からアドバイス。「皆さん熱心なので、こちらが教えられることも多いですよ」と温厚な顔をほころばせました。
伊藤さんは4年前、友人に誘われてボランティア活動を始めました。そのなかでも、現役時代に流通業界でソフト開発に携わっていた伊藤さんにとっては、このセミナーの手伝いは適任といえるでしょう。年はとっても、「自分のもっている知識を少しでも生かすことができれば、こんなに嬉しいことはないですね」。その表情からは、第2の人生を謳歌している様子がうかがえました。

パソコンは世界を広げる道具。
パソコンは、「生活情報などを入手し、常に触れ合うのに有効な手段」(郵政省)といわれています。一方、「操作方法が複雑」とか、「専門用語が多すぎる」などの理由から、高齢者にとっては踏み込みにくい領域と思われてきました。しかし、居ながらにして様々な情報を入手できる便利さを考えると、体がなかなか思うように動かない高齢者や障害者にこそ利用してもらいたい道具なのかもしれません。人生を充実させる1つの手段として、パソコンと向き合ってみませんか。

これからパソコンを始めたい方に

『シニアのためのパソコン読本』  満冨由美子著/ローカス/1200円
入門書なのになぜかわかりにくいのが、パソコンの入門書。それは、「まずパソコンありき」という前提で書かれているからでしょう。この本は、「入門書は読む気が起きない」という方に絶対お勧め。パソコンを使うことの意義や使い方、さらに機種の選び方までわかりやすく丁寧に解説してあります。「シニア世代の方々が、生き生きとした主体性のある暮らしを育んでいただけるよう、パソコンの活用法をご提案したものです。(本書より)」という作者の意識がはっきりと伝わってきます。
プロップ・ステーション 理事長・竹中ナミさん

プロップ・ステーションは、コンピュータやコンピュータネットワークなどを活用して、障害をもつ人の自立と社会参加、とりわけ就労の促進や雇用の創出を目的に活動する社会福祉法人です。スタッフは障害者とその家族、そして様々なハイテク技術をもった人たちで構成されています。現在会員は全国に約350人(機関誌『flanker(フランカー)』の定期購読者を含めると約500人)です。現在は、障害者だけでなく、高齢者層にも対象を拡大し、ハイテク支援活動を行っています。
コンピュータ・セミナーやその他お問い合わせは、下記の連絡先まで。

プロップ・ステーション大阪事務所

  • 大阪市北区池田町1-75-607
  • TEL 06-6881-0041

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