internet@ASCII 1998年7月号(1998年6月29日発行)より転載

インターネットとChallenged

インターネットは打ち出の小槌。重度障害者の社会進出を支援するナミねぇのパワフルエッセイ開始!

竹中ナミ(nami@prop.or.jp):コンピュータネットワークを利用することで障害を持つ人々の社会的自立を目指すNPO「プロップ・ステーション」を'92年4月に設立。会員から「ナミねぇ」と慕われる組織の大黒柱。しゃべりはバリバリの大阪弁!

vol.14 今年の夏は燃えまっせ!

今年は規模を大きく国際会議!

皆さん、お元気ですか。ナミねえ@プロップ・ステーションです。

昨年7月、東京大学山上会館で開催した「challenged Japan Forum」の報告を、以前この連載に書かせてもらったけど、今年の8月は、思い切って海外からの事例発表を含む国際的な会を開くことにしました。タイトルは「challenged Japan Forum Universal Meet★ing(チャレンジド・ジャパン・フォーラム国際会議)」。キャッチフレーズは「Go for it!(やるしかない!)」です。ナミねえの生まれ育った街、神戸で開催します。 

コンピュータネットワークを活用して行われるchallengedの就労促進や、高齢者を含む在宅ケア、在宅ワークなどの現状と未来への展望を、国内外の多彩なゲストをお招きして語っていただく予定です。また、こうした問題に新しい感覚で取り組み始めている地方自治体の首長さんにその内容を発表してもらい、自治体間のネットワーキングを深めてほしいと考えています。

challenged Japan Forumは、産官学民の枠を超えて議論を深めるというのが目的です。と、一口でいうのはたやすいけど、産官学民の連携は、実際やろうとなかなか難しいのが現実です。でもここはひとつ、それぞれの立場の人たちが、軸足はしっかり自分のポジションに置いたままで、もう一方の足を、ちょっとずつ出し合って「コンピュータネットワークを活用した新しい社会システムとコミュニティの創造」に取り組んでもらえれば、と思っています。産官学民の広範な方々にご参加いただくことで、今回の「challenged Japan Forum Universal Meet★ing」が、具体的な施策の実行につながる大きな一歩になることを願っています。

今回は規模の大きな会なので、プロップ主催ではなく、実行委員会形式で進めています。実行委員長は、神戸大学工学部長の北村新三教授。実行委員は次のようなメンバーです(敬称略)。

  • 須藤 修(東京大学社会情報研究所助教授)
  • 清原慶子(ルーテル学院大学教授)
  • 田中克己(神戸大学大学院自然科学研究科教授)
  • 上原邦昭(神戸大学工学部情報知能工学科教授)
  • 川島正英(株式会社地域活性化研究所代表取締役)
  • 倉谷光一(日本電信電話株式会社 NTT神戸支店長)
  • 天野 昭(株式会社ニューメディア代表取締役)
  • 竹中ナミ(プロップ・ステーション代表)
  • 永吉一郎:事務局担当(株式会社デジタル・ラボ代表取締役)

海外事例は、スペインとスウェーデンから

詳しいご案内はプロップのホームページ(http://www.prop.or.jp/cjf4/)を見ていただくとして、今回はこの会議のトピックを2つ、ご紹介しましょう。

8月8〜9日(土・日)の2日間にわたって開催されるこの会の1日目、国際会議実行委員長:北村先生と、challenged Japan Forum座長:須藤先生の開会宣言に引き続き、ナビゲーターに慶応大学の金子郁容教授を迎え、国内外の事例発表とパネルディスカッションを行います。海外の事例は、スペインからお招きする「ONCE(オンセ)」と、スウェーデンの「SAMHALL(サムハル)」、国内は「プロップ・ステーション」ということで、ナミねえが事例発表させていただきます。

「オンセ」は視覚障害者の福祉団体で、National Organization of the Spanish Blindの略。1938年設立。全盲または視覚障害者の会員5万人で構成されており、スペイン政府から宝くじの発行を認可されています。そこから得た収益をさまざまな投資で運用し、障害者の雇用促進活動や社会インフラの整備などにあてているだけでなく、最近では世界11ヵ国で設けた「デジタルの音声標準化システム委員会」の参加団体として日本の委員たちと連携して活動しています。「デジタルの音声標準化システム」は「DAISY システム」と呼ばれ、この標準化によって、視覚障害者がキー操作でフレーズ単位のデータ検索が行えるようになりました。「DAISY システム辞書器」は、vol.1が4月下旬から3万9800円で発売されており、当日はそのデモも行いつつ紹介する予定です。

スペインでは、税金の一部をNPOやNGOに寄付することを選択できる制度もあり、民と官の連携が求められる日本にとって、参考になる事例発表を聞けるのではないかと思っています。

「サムハル」は1980年設立され、現在28のグループ会社と3万2000人の従業員を擁するスウェーデンでも最大の企業グループです。そして、なんと社員の90%(約2万9000人)がchallengedです。親会社の「サムハル AB」は政府直営企業となっています。事業はソフト開発、製造、サービス業など多岐にわたり、スウェーデン最大の業務請負会社です。

スウェーデンというと、「高度なケアの受けられる福祉国家」というイメージが日本では強いんですか、challengedが持てる能力を生かして仕事をするシステムが存在することは、まだあまり紹介されていません。今回の国際会議を契機に、スウェーデンのchallenged事情を知るとともに、日本のchallengedの就労促進にとって、良き目標ができるのでは思っています。

オンセ、サムハルの事例発表のあと、ナミねえからプロップの紹介をして、その後3者でパネルディスカッションを行います。逐次通訳を兵庫県国際局の協力で付けていただく予定です。

新しい地域コミュニティを造ろう

トピック "その2"は、会議のラストを飾る「コンピュータネットワークを活用した、challenged・高齢者を含む新しい地域コミュニティの創造」です。このセッションでは、マイクロソフト代表取締役の成毛真さんのナビゲーションで、兵庫県の貝原俊民知事、宮城県の浅野史郎知事、ルーテル学院大学の清原慶子教授を会場にお迎えし、TV会議システムを使って「よさこい祭り」の会場から橋本大二郎高知県知事にも登場していただき、クロスオーバー・トーキングを行います。

コンピュータネットワークを積極的に活用した、地方自治体の新しい取り組みを3人の知事に発表していただくとともに、こうした取り組みが日本の各地に広がっていくことで、challengedや高齢者の社会参画とネットワーキングを推進しよう! と呼びかけます。地方自治に携わる多くの自治体職員の方々、自治体のネットワーキングに関するお仕事に取り組んでおられる企業の方々に、ぜひ聴講してほしいセッションです。

最近プロップには、多数の自治体から「在宅福祉や在宅就労にコンピュータネットワークを活用する場合のコンテンツ」の相談が寄せられています。特に、過疎の町・村を持つ自治体の悩みは深く、コンピュータネットワークを使った新しいコミュニティ創造のコンテンツが、切実に求められています。そういう意味で「高知県生活情報維新」という取り組みは、とりわけ参考になるのではないかと思います。

1人でも多くの方が、8月8〜9日に開催される「challenged Japan Forum Universal Meet★ing」にご参加くださるよう、心から願っています。参加の申し込みや問い合わせは、表を参照してください。

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