神戸新聞 1997年8月15日より転載

デジタルガイドで車いす応援します

まず神戸・北野から

NPOの試みに企業賛同


ガイド作りのため、障害者用トイレの使い勝手を試すプロップ・ステーションのメンバー=神戸・北野

「車いすでの神戸・北野観光ガイドを作りたい」というNPO(非営利団体)の取り組みに、大手のコンピューターメーカーや地図製作会社、ナビゲーションシステム研究者らが賛同し、これほど行われた現地調査には、マルチメディア関連企業などを中心に21人が参加した。「共生」や「企業市民」の意識の高まりとともに、インターネットなどのデジタル世界に"異人館街の北野"を再現するという発想が、新たなビジネスチャンスを探る企業の関心を引いたようだ。

Iネットで情報提供

ガイドづくりは、「チャレンジド」(障害者)と健常者が一緒に学ぶパソコンセミナーなどを開いている「プロップ・ステーション」(竹中ナミさん代表)が計画。阪神・淡路コミュニティ基金の補助も受け、楽しめるガイドづくりと観光を通じて復興支援を目指している。「自宅からでも楽に情報を得られる」とインターネット発信を前提とし、このほど現地調査をした。

新たなビジネスと関心

取り組みを知った研究者が地図製作会社大手のゼンリンの担当者に話したところ、「商売になるかは分からないが、協力できるのではないか。地図会社として将来の可能性を考えてみたい」(江河博己・電子地図副担当)となった。

同社は住宅地図データなどのCD−ROM化やカーナビゲーション利用に力を入れており、盲導犬ロボットの研究や運転席などの目線からの街のデータ作成にも取り組んでいるが、車いす対象のデータはないという。

また、障害者ら情報弱者のための支援システムづくりを進めている日本IBMは「コンピューターメーカーとして何ができるか。ここは急な坂がある、この異人館はヘルパーがいる、などの情報提供くらいはできるのではないか」(井上憲一・西日本支社公共営業部課長)と、取り組みに加わる。

坂の傾斜やヘルパーの有無も

今後について、江河副担当は「地図情報の中に微妙なでこぼこや坂の傾斜などをどう盛り込むかが課題」とし、井上課長は「障害者だけを対象にしていては需要が少ない。3D技術などで楽しめるようにして、その中に障害者向けのものを入れればだれでも使える」と話している。

プロップ代表の竹中さんは「ビジネスベースに乗ることで、情報の入手も容易になり、競争によって質も向上する」と、企業の参加を歓迎している。

問い合わせは
神戸事務所 TEL 078-845-2263

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