朝日新聞 1996年9月4日より転載

パソコンで自立を障害者に通信講座

インターネット上にバリアなし

障害者の在宅就労を目指す大阪の非営利団体が、インターネットを使ってコンピューターのプログラム技術を教える通信講座を始めた。プロの技術者を育て、雇用に結びつけるのが目的。情報通信社会で新しい障害者の働き場所を開拓する試みとして注目されている。

大阪の団体が開く

「在宅スキルアップ・セミナー」と名付けられた講座を始めたのは、関西を中心に活動する「プロップ・ステーション」(竹中ナミ代表)。同団体はコンピューターを活用した障害者や高齢者の社会参加を進めるため、5年前に発足した。

これまで大阪市内で障害者向けの初級パソコンセミナーを開き、約150人が受講した。遠隔地からの参加希望にも応じるため、今回初めて、すべてをインターネット上で運営する通信講座をはじめることになった。

受講生の募集からテキスト配布、質疑応答、リポート提出、実力テストまでのすべてをオンラインで処理する。外出が難しい障害者にとって利用しやすいシステムだ。8月から始まった講座には、岩手、新潟、埼玉、神奈川、長崎から計6人が参加した。

高校時代、体育授業中の事故でけいついを痛め、車いす生活を続けている盛岡市南仙北1丁目の大久保朝弘さん(33)は、知人の勧めもあり、セミナーを受講している。「全国どこにいても参加できるのがありがたい。技術を身につけて仕事に結びつけば・・・。こうした講座を待ち望んでいた」

仕事受注し割り振りも

週1回、6人に課題を与え、パソコン画面上で質疑のやりとりをするボランティア講師の西宮市甲子園3番地、橋口孝志さん(61)は「生徒が障害者だという意識は持っていない。コンピューターネットに参加すれば、だれもが同じ立場。障害の有無は関係ない」と話す。

半年間の講座で、データベースを自力でプログラムできるレベルを目指す。同団体では、これまで公立高校の成績管理システムや企業の在庫管理システムの仕事を受注した成績がある。今後、同団体が企業との窓口となって仕事を受注し、障害者に割り振りをする「コーディネーターとしての役割」(竹中代表)をしていきたいとしている。

日本障害者雇用促進協会中央障害者雇用情報センター(東京)の昼間稔所長は「情報通信の発展で新しい職域が生まれ、障害者にも就労機会が増えている。インターネットを使った教育は新しい試みであり、成果を注目したいと話す。

プロップ・ステーションのアドレスは「http://www.prop.or.jp/」

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