産経新聞 1996年6月11日より転載

キーワード人物事典 ―― インターネット ――

青木 勝洋

障害者雇用の夢託し

コンピューターを活用して障害者の就労促進をめざすボランティア団体「プロップ・ステーション」(大阪市北区)を、5年前に設立した。昨年からはインターネットを使い、重度の人たちの在宅勤務を実現するための実験を始めた。

目標は「チャレンジドを納税者に」。

「チャレンジドとは、障害をもつ人を表す新しいアメリカ英語。私たちも「障害者」に代わる言葉として使ってます。これ、30数年前に、ケネディが大統領選を戦ったときの公約の1つなんです。

個人のインターネットについては、いまひとつ利用目的がわからない、という議論がある。しかしチャレンジドにとっては、行動半径を大きく広げる”打ち手の小づち”。

「チャレンジドと健常者が歴史上初めて、同じスタートラインに立てたのが、インターネットじゃないかと思うんです」

障害者雇用では、働く場所までの距離が大問題。世界中につながるインターネットによってそれを解消できれば、チャンスは限りなく広がる可能性がある。

「最重度の人たちが在宅勤務できるシステムができれば、そのほかの人たちも自然と乗っかることができるんじゃないか、と」

昭和23年、神戸市で生まれた。長女が重度の障害をもっていたことが、ボランティア活動を始めるきっかけになった。これまでに、手話通訳、介護ボランティアなどさまざまな活動に取り組んだ。

コンピューターを活動の柱にしたのは、重度障害者への全国アンケートで、8割の人たちに就労意欲があり、コンピューターに期待していることがわかったから。メーカーの協力を得て開講しているコンピューターセミナーの受講生は100人を超え、その1割は実際に仕事をしている。

「働けるか、働けないかを、社会が決めていいはずがありませんもの」

グループの名前のプロップ、とは支えのこと。チャレンジドが「支える立場」になる夢を、パソコンに託す。

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