ASAhIパソコン 1996年5月15日号より転載

インターネットを障害者の武器に

中和 正彦

3月17日、横浜であった「コミュニケーション福祉機器展」で、インターネット時代の障害者の社会参加について、講演とシンポジウムが行われた。講演をしたのは、大阪のNPO(非営利組織)「プロップステーション」代表の竹中ナミさん。「チャレンジドを納税者にできる日本」をキャッチフレーズにするプロップは、コンピュータを活用した障害者の就労促進や雇用創出に取り組んでいる。ちなみに、「チャレンジド」とはアメリカの障害者の呼称の一つで、「挑戦すべきことを神から与えられた人々」という意味。プロップでは「障害者」に代わる呼称として使っている。以下、公演の要旨を紹介する。

これからの高齢化時代、「障害者だから」「定年だから」といって、働く希望も能力もある人をリタイアさせていたら、彼らを支える側の負担は大変になる。彼らに税金を使うなら、保護のためではなく、彼らが働ける社会を作るために使うべきである。そうすれば彼らは収入を得て、税金を納め、本当に保護が必要な人々を支える側に回れる。それが、彼らの生き甲斐や誇りにもつながる。

4年半前、チャレンジドを対象にした活動を始める時に、重度の身体障害者へアンケートした。8割の人が「働きたい」と回答し、大半が「武器があるとしたら、コンピュータだと思う」と答えた。それで、コンピュータを活用した就労促進や雇用創出を活動のテーマに据えた。

彼らの多くは、コンピュータを勉強したくても教えてくれる場がなかった。評価してくれる場もなかった。だから、仕事との出会いがなかった。できそうな仕事があっても、通勤できないために断念しなければならなかった。

私たちは技術のわかるボランティアを募集し、パソコン・セミナーを開き、チャレンジドに技能をつけさせる一方、私たちの責任において彼らに在宅でできる仕事を発注してくれる企業を探した。

そんな仕事は、通信ネットワークの拡大によって、急速に増えていくはず。すでに、理解のある企業から、いくつか仕事をいただいている。最近は、セミナー修了者で「ホームページ作成チーム」を発足させ、その仕事の受注を始めている。

私たちは、一般の営利企業が受注するよりも安く仕事をこなせる。しかし、それは「チャレンジドを使うから安い」のではない。「非営利団体が受注するから安い」のだ。チャレンジドには仕事の内容に見合った報酬を払う。

でも、私たちの活動には限界がある。もっとこのような活動をするNPOや公共的システムが生まれてほしい。企業には、こういう活動の支援が社会貢献になるという視点を持ってほしいし、その中で「仕事ができる」と思うチャレンジドと出会ったら、どんどん引き抜いてほしい。

プロップステーション
〒530大阪市北区同心1-5-27
大阪ボランティア協会内
TEL&FAX 06-881-0041
nami@prop.or.jp

ページの先頭へ戻る