産経新聞 1996年2月7日より転載

ネットワークで元気 プロップ・ステーション2

コンピュータで広がった世界

コンピュータネットワークを活用して、障害のある人たちの就労を目指すプロップ・ステーション(竹中ナミ代表、tel 06-881-0041)。発足5年、話題のインターネットを視野に入れた新しい在宅就労への試みも動き始めている。

「インターネットは画像による表示が多いので、慣れるとパソコン通信より作業はしやすいですよ」 大阪・堺市の自宅でコンピュータ画像をスイスイ切り替えながら話す山崎博史さん(31)は、プロップ・ステーションが主催するコンピューターセミナーの卒業生。

現在は、プロップ・ステーションの実務部門、プロップ・ウイングに所属。府立高校の成績管理システムや貿易会社の会計管理システムのデータベース開発などで実績を積む一方、インターネットのホームページづくりや、プロップ・ステーションと東京の野村総合研究所が昨年12月から共同で始めた、インターネットを使っての重度障害者の在宅勤務の可能性をさぐる実験に参加する。

実験の中で山崎さんが担当するのは、インターネットに開設されているホームページを調べる”ネットサーフィン”。毎日、70〜80件ある新着情報から、オンラインショッピングや行政サービスなどに関する項目を検索、商品の注文・支払い方法、サービスの開始時期などの質問を相手先にインターネット経由の電子メールで送り、回答をリポートにまとめて野村総研に報告する。

「指示を受けるのも、問い合わせも、報告もすべて電子メール。在宅で、自分のペースで仕事ができるので、障害をもっていることが、ハンディになりません。この実験がうまくゆけば、障害者にも大手企業から在宅勤務の依頼がくるのでは」と期待をふくらませている。

19歳の時、自動車事故で負った頚椎損傷のため、車いす生活。指もほとんど動かないが、トラックボールと呼ばれる入力装置や、キーボードの操作を簡略化できるソフトが、山崎さんと世界を結ぶ。

しかし、そんな山崎さんも2年前にプロップ・ステーションを知るまでは、コンピュータとは無縁。その年の6月に中学時代の同級生と結婚、働く場を探していた山崎さんの耳に「障害者の自立のためのコンピュータセミナー」という言葉がラジオから飛び込んできたのが、すべてのはじまりだった。

山崎さんは、そんな自身の歩みを2月9日、堺市の障害者福祉市民講座で話す。タイトルは「いつも心にほほえみを」と決めている。(服部素子)

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