産経新聞 1996年1月31日より転載

ネットワークで元気 プロップ・ステーション1

世界広げる"打ち出の小づち"

メンバー間の連絡はパソコン通信、話題のインターネットにもホームページを開設する「プロップ・ステーション」(大阪市北区、竹中ナミ代表)。コンピューターネットワークを活用して、障害を持つ人の社会参加と自立、とりわけ就労を目指すNPO(非営利団体)だ。メンバーの一人は、居ながらにして外の世界に通じるコンピューターを、重度障害者にとっての“打ち出の小づち”と呼ぶ。(服部素子)

「1月22日、チャレンジドチームが作成したホームページを、大阪・城見にあるツインタワーのインターネット・カフェで発表します」

新年早々、プロップの代表、竹中さんから連絡が入った。ホームページとは、そのグループが提供するいわば“電子カタログ”。チャレンジド(障害をもつ人たち)の制作技術をコンピューター画面で世界中の人や企業に知ってもらい、障害者の在宅雇用につなげるチャンスにしたいと、声がはずむ。
プロップ(英語で支え棒の意味)の発足は、平成3年5月。活動の中心が、障害を持つ人たちを対象にしたコンピューターセミナーだと聞いたときは正直、驚いた。健常者でも手こずるコンピューターを、障害のある人たちが使いこなせるのだろうかという思い込みがあったからだ。

しかし一度、セミナーを見学して、脳性マヒの青年が介助具に支えられながらキーボードをたたく姿や、頸椎損傷で指の動かない人がトラックボール(入力装置)を懸命に操作する様子を見て納得した。 そのとき、竹中さんに聞いたのが“打ち出の小づち”という言葉。従来考えられなかった世界が、障害者の前にも広がったといえる。

現在プロップの会員は、約250人。3分の1は、肢体・視力・聴覚・内臓などにさまざまな障害を持つ。

1月22日。会場となったインターネット・カフェにはソフトウエア技術者協会との共催とあって、当事者、研究者、企業人合わせて百人を超える参加者が集まった。プロップの顧問でもある大阪市立大学の中野秀男教授の、インターネットを使った講演に続いて、いよいよメンバーが作ったホームぺージの発表。

手元のマウスを画面の指示に従ってクリック(操作)すると、ホームページを作成した6人のリストが現れ、その名前に合わせて、マウスを再びクリック。 グラフィックで描かれた猫の顔や、本人のスナップ写真などそれぞれの個性を凝らした、カラフルな画面が登場した。

インターネット上に、障害を持つ人たちのニュービジネスの可能性が開かれた瞬間だ。

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