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「厚生労働省遠隔ITセミナー」が開催されました!

「厚生労働省遠隔ITセミナー」が2月13日と14日の2日間に渡って実施され、無事成功裏に終了しました。長年、ICTを駆使して「チャレンジドの在宅ワークの推進」に取り組んできたプロップ・ステーションが、厚生労働省と、「遠隔教育システム」を開発した劾TTネオメイトのバックアップをいただき、仙台と京都に住む在宅チャレンジド・スタッフを講師として、東京の厚生労働省パソコンセミナールームに集まった官僚・企業人のみなさんにIT講習を行うという、日本で初めての事業でした。

それでは、当日の模様をナミねぇがリポート風にご紹介しましょう。ちょっと長いですけど、ぜひ最後まで読んでくださいね。

                ◇        ◇        ◇

ナミねぇ ご挨拶
写真:ナミねぇのご挨拶
開講を待つ会場では。

セミナー開催時刻を間近にひかえ、プロップ・ステーションの在宅スタッフたちが、会場からはるか離れた仙台と京都そして兵庫それぞれの自宅から、インターネットを通じて入念な打ち合わせを進め、それを会場スタッフがアシストします。大画面のディスプレイに写る講師たちの姿。彼らの音声だけが響く会場はいやがうえにも緊張感が漂います。


まず始めにナミねぇよりご挨拶をさせていただきました。

「プロップ・ステーションは、16年前一般家庭にまだパソコンなど無かった時代から、重度の障害を持つ人でもIT技術を駆使することで社会に参画できるようにすることを目標に発足しました。そして現在、IT技術の進歩や、自立支援の方向への行政の変化などが後押しとなって、このような催しを実現できることとなりました。応援してくださった皆様に心から感謝申し上げます。今日は厚生労働省のセミナールームをお借りして、在宅の重度のチャレンジドが講師を務め、テレビ会議のシステムで皆様にITのセミナーを行うデモンストレーションをさせていただきます。この機会に、どんなに障害があっても努力をすれば、その方の出来ることを仕事にして行ける、勉強が出来る、あるいは講師として後進を育てることが出来る、そうした期待感をぜひ抱いていただきたいと思います。これだけたくさんの方にお集まりいただき、ほんとうにありがとうございました」

つづいて今回のセミナーの講師を務める、プロップ・ステーションが誇るチャレンジド・スタッフの紹介です。

西村薫さん@京都
写真:京都の自宅から、西村薫さん。
間藤裕也さん@仙台
写真:仙台の自宅から、間藤裕也さん。
メイン講師を務めるのは、初日は仙台の自宅から間藤裕也さん、2日目は京都から西村薫さん。そして東京の会場でサブ講師を務めるのは、神戸オフィスの岡本敏己さんと菊田能成(たかふさ)さん。また、みんなと協力して今回のセミナーの企画立案から教材作成まで、いわばプロデューサーの役割を果たしてくれたのが、尼崎在住の中内幸治さん。そして教材の素敵なイラストは大阪の安藤美紀さんが作成してくれました。みなさんの詳しい紹介はこちらでご覧下さいね。

↓チャレンジド・スタッフの紹介はこちらで

リンクボタン:チャレンジド・スタッフの紹介へ


厚生労働省
辻哲夫 次官
写真:厚生労働省 辻哲夫事務次官
今回のセミナー開催は、厚生労働省の皆さんのほんとうに熱い思いと応援で実現しました。事務次官の辻哲夫さんから、開講に先立ってご挨拶をいただきました。

「自立支援法が成立しましたが、障害のある方が持てる力を発揮してともに暮らせる社会こそ、心豊かなほんとうに良い社会だと思います。障害のある方々がお持ちのさまざまな能力を生かすことの出来る社会を創りたい、それがわたしたちの心の底からの願いです。
本日西村さんと間藤さん、そして菊田さんと岡本さん、四人の方に講習をしていただきます。わたしたちはこのような素晴らしい能力をお持ちの方々に学び、ともに暮らす心豊かな社会になってほしい。こう願ってこの講習が成功することを祈り、このようなことを、ともに日本中に広げてゆきたいと思います。皆さん、どうぞよろしくお願いします」(辻次官)


国土交通省
安富正文 次官
写真:国土交通省 安富正文事務次官
厚生労働省のみならず、いま霞ヶ関の多くの省庁でこうした取り組みをバックアップしようという動きが出てきています。応援団の一人として国土交通省の安富正文事務次官にもご挨拶をただきました。

「国土交通省も、障害を持った方が社会参加できるように、一番大きな問題である移動・交通問題を解決するため、バリアフリー法などで下支えしてゆきます」(安富次官)との心強いメッセージでした。


この講習会はインターネットを利用した最新の技術があって実現したのですが、そのシステムを提供してくださったNTTネオメイトの担当者、橋本秀俊さんから、まず始めに技術の概要説明をいただきました。

NTTネオメイト
橋本秀俊さん
写真:NTTネオメイト 橋本秀俊さん
橋本さんの説明を簡単にまとめると、今回の遠隔講義には「テレビ会議システム」と「SBCシステム」という二つの技術が使われています。インターネット上にサーバーがあるので、遠隔でも授業が可能なんですね。そして、1.映像・音声・資料を双方向でやり取りでき2.受講者のパソコンを講師が遠隔で操作でき3.講義に必要なOSや、今回でしたらパワー・ポイントといったソフトまでがサーバー上にあるので、受講者が用意しなくても良い、この3点が特徴です。
「SBCシステム」とはサーバー・ベースド・コンピューティング・システムの略で、受講者のパソコンをすべてサーバー・コンピュータがインターネットを通じて一元的に管理するものだそうです。詳しくはこちらをご参照くださいね。

↓SBCシステムの説明はこちらで
リンクボタン:SBCシステムの説明へ

こうした最新の技術を使うことで実現した今日のセミナーです。私たちがいつも掲げているのが、「最新・最高の科学技術こそが最重度のチャレンジドの力までをも引き出すことが出来る」ということで、そうした意味から、私たちはこれまで最先端のIT関連企業のみなさんや通信事業者のみなさんと連携しながら活動してきました。今回はその成果を見ていただく場でもあるわけです。


前方の大スクリーンと受講者の
パソコンには同じ画面が
写真:大スクリーンとパソコン画面には同じ講習画面が
講師の自己紹介に引き続き、いよいよ講習の始まりです。教室前方の2つの大スクリーンと受講者の机に並ぶパソコンには、同じ講習画面が表示されています。

講習に使われるテキストは全30ページに渡る大部なものです。このセミナーのためにプロップ・ステーションのスタッフによって半年間もかけて作成されたんですよ!このテキストを利用してPower Pointの操作法を学習しながら、『「遠隔講習」システムとチャレンジドの就労モデル』という5ページのプレゼンテーションを完成させるのが講習の目標です。

↓『「遠隔講習」システムとチャレンジドの就労モデル』完成版はこちらです
リンクボタン:プレゼンテーション完成版へ

初日にメイン講師(テキストを使って指導する講師)を務めるのは、仙台の間藤さん。そしてサブ講師(メイン講師を補助して受講者の進み具合をチェックする)を務めるのが京都の西村さんです。二日目はそれぞれが逆の立場で指導に当たります。会場の受講者を後ろから直接見守るのは、神戸から駆けつけた岡本さんと菊田さんです。
講習時間は約一時間半が予定されています。また一日目の受講者は厚生労働省官僚・職員のみなさん、そして福祉関係者の方々、二日目は企業の雇用担当者の方々が中心となっています。

会場に掲げられた
「〜平成18年度障害者自立支援調査研究プロジェクト〜障害者を講師とした遠隔地によるパソコン講習(デモ講習)」の文字
写真:会場に掲げられた「〜平成18年度障害者自立支援調査研究プロジェクト〜障害者を講師とした遠隔地によるパソコン講習(デモ講習)平成19年2月13日(火)・14日(水)於:厚生労働省研修室」の文字
両名の講師は、教材作りから指導方針までを約半年かけて打ち合わせ、リハーサルを重ねてきただけに、講義を進める声からはとても落ち着いた様子が会場に伝わって、受講者も静かに、かつ熱心に耳を傾けます。講師はシャドー機能(SBCシステムの項参照)を利用して、遠隔で受講者のパソコン画面の状態を管理操作しているので、受講者が間違った操作をしたりするとサブ講師がすぐに遠隔で訂正の対応をしますから安心ですね。

パワー・ポイントの起動です。

講習画面は本来のパソコン画面と、それと同じSBCシステムの仮想画面に分かれており、仮想画面のスタートボタンで起動させますが、使い勝手は変わらないようです。講師からパワー・ポイントの画面入力方法が一通り説明されました。

教材を利用しながら、実際のプレゼンテーションの作成に入ります。時間が限られているので、ある程度の文字情報などはあらかじめ用意されており、必要なデザインテンプレートを利用してタイトルなどのテキストを入力します。受講者の進み具合は、常にサブ講師がチェックしており、講師がそばにいるのと全く変わらない雰囲気で講義は進んでゆきます。

熱心に講義に聞き入る受講者の皆さん
写真:熱心に講義に聞き入る受講生の皆さん
グラフの作成!

つづいてグラフの作成にチャレンジです。エクセルで作成した資料をグラフで表示させる操作を学びます。パワー・ポイントのインポート機能を使って入力された情報を元に順調にグラフが出来上がってゆきました。
受講者が誤った操作をし、遠隔のサブ講師がすぐに見つけ出して連絡し、メイン講師が遠隔操作で受講者のパソコンを修正する光景も見られました。ポインタが独りでに動くので、まるで肩越しに手をのばして訂正の操作をしているような雰囲気ですね。

今回使われた全30ページの
テキスト 表紙
(クリックすると目次へ)
写真:30ページにわたるテキストの表紙。クリックで目次へリンク。
次のステップは、箇条書きの追加と図の挿入です。イラストの挿入ではマイピクチャに保存されたデータを選択しますが、このイラストは大阪のプロの漫画家、安藤美紀さんが作成したものです。つづいて図表の作成ですが、今回はプレゼンテーションの目的にあわせてピラミッド型が選ばれ、要素やスタイルを入力してゆきます。
戸惑っている受講者には、会場に控えたチャレンジド講師がアシストしますが、その機会も少なくたいへん順調に講義は進んでゆきます。

講習の最後にはアニメーションの設定を学びました。

アニメーションの利用は視覚に訴える、より効果的なプレゼンテーションを行うのに不可欠なものです。講習ではアニメーションを一括して設定する方法を学びました。最後には無事に受講者の各パソコンから選択したアニメーションが再生されました。クリックすることで、その都度アニメーションを表示することも出来るし、アニメーションからハイパーリンクを利用して、別のサイトに移動することも可能です。ほんとうに便利なものですね!

作成したプレゼンテーション・ファイルを保存して講習は無事終了しました。講師からは「パワーポイントには、今日学んだ以外にもさまざまな機能がありますから、ぜひこれからも頑張って学んでいってください」とのメッセージがありました。

西村、間藤、両講師とも最後までほんとうに落ち着いて、とても丁寧で分かりやすい講義でした。

受講者からはご意見もよせられました
写真:受講者からはご意見も
講習が終わって受講者や取材陣からはたくさんの質問やご意見が寄せられました。

「遠隔講師からは、受講者の実際のパソコン画面がどのように見えているのか」 「講師の通信回線は何か」(両講師ともケーブルテレビ) 「携帯電話での利用は可能か」 「生徒が自宅にいる場合でも講習可能か」 「最高で何人程度の受講者に対応可能か」 「オンラインの講師の経験はあったのか、またやってみての感想は」 「SBCシステムを障害者が利用するのは初めてか」 「このシステムは商品化されるのか」  「講師から受講者の動きの詳細が窺えるのか」 「複数の受講者をきめ細かく指導するノウハウは」 「企業どうしのシステムの共同利用は可能か」 「大人数での利用を出来るようにして欲しい」 「こうした活動が全国にひろがるよう、国も協力して欲しい」 etc
それぞれの質問やご意見に、ナミねぇや技術担当者、そして事務局でセミナーの指揮を取った阿波雅以さんも交えて対応しました。

また、講習終了後には出席者の方々からアンケートも取らせていただきましたので、まとまった時点であらためてご報告したいしたいとも思っています。

会場からのご意見に、ナミねぇも身の引き締まる思いが。

福祉関係の出席者の方からは、実際にインターネットを利用して講習をした際の限界点や、同じようなシステムと比べて、今回は遠隔講師が画面を通じて直接受講者のパソコンを操作できることを高く評価する声がありました。そして実際に安価で利用出来るようになって欲しいとの希望が強く出されました。また、講師がとても素晴らしかったとのご評価もいただきました。

ナミねぇは、今回のような講習が近い将来には日常的に実現することを願っているので、こうした質問や希望を技術者の方々がしっかり受け止めて、技術の進歩につなげていって欲しいと心から思いました。技術者の方は「不可能に挑戦したい」という技術者魂をお持ちの方が多いと思うので、きっと実現しますよねっ!
そして、企業がこうしたことを実現してゆくためには、開発に見合った需要がなくてはいけないわけで、これからは技術を必要とする私たち自身がみんなで力をあわせてシェアしながら、システムを発展させていくということが必要なのだと思います。

また養護教育の現場での、障害者のこういった働き方(インターネットを利用した在宅就業)の周知を求める声もありました。ナミねぇは今、省庁横断での活動に力を入れているところでもあり、まさにこうした問題を考えるにはひとつの省庁だけでは不可能なわけで、これからますます頑張ってゆかなければと身の引き締まる思いがいたしました。


厚生労働省
箕輪優子 専門官
写真:厚生労働省の箕輪優子 就労支援専門官
第一日目の最後、受講者のみなさんからの質問が終わったあと、厚生労働省の就労支援専門官、箕輪優子さんからご挨拶をいただきました。

箕輪さんは、民間から障害者雇用の分野でのスペシャリストとして厚生労働省に入られた方です。今回のセミナー実現にあたって最初から大変なご尽力をいただきました。
「重度の障害者の中でも、このような働ける方からの声がなかなか届いてこないということに課題を感じます。障害者就労支援担当者として、いろいろな方向で可能性を見つけ多様な働き方を考えてゆきたいと思っています。このようなセミナーを通じて、雇用する側から、研修を受ける、アウトソーシングするといったさまざまな可能性について情報をいただきたく、また皆様からの情報発信もよろしくお願いします」(箕輪専門官)

にこやかに語る
厚生労働省 中村秀一 社会・援護局長
写真:にこやかに語る厚生労働省 中村秀一 社会・援護局長とナミねぇ
第二日には厚生労働省の社会・援護局長の中村秀一さんにもご挨拶をいただきました。

「竹中さんのお話の通り、IT技術の進歩がチャレンジドにとって非常に良い状況になって来ています。わたしたちも重度の障害がある方が、普通に地域で暮らせる社会創りをせいいぱい担ってゆきたいと思っています。個人的な感想では、アニメーションがあんなに簡単に入れることが出来るんだなあと分かりまして、次回からわたしのパワーポイントは “動く” ようになります(笑)。ありがとうございました」(中村局長)



                ◇        ◇        ◇

二日間にわたった講習もすべて無事に終了しました。

最後に、今回の企画を実現するために力をお貸しいただいたすべての方に、あらためて心から感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

そしてこの成功は、何よりチャレンジド自身がこれまで不断の努力をつづけてきたからこそもたらされたもので、ナミねぇはスタッフみんなに惜しみない拍手を送りこのリポートを終えたいと思います。ほんとうにご苦労さまでした。そしてまた共に頑張りましょう!

<リポート by ナミねぇ>

  写真:第二日の講習が終り、在宅講師と会場のみなさんがそろっての記念撮影です
    二日目の講習が終り、在宅講師と会場のみなさんがそろっての記念撮影です


                ◇        ◇        ◇

セミナー初日の取材風景
写真:セミナー初日、熱心に講義を受ける受講生を取材する報道カメラマン
今回のセミナーの模様が朝日新聞東京新聞の記事で取り上げられました。毎日新聞のナミねぇの連載コラム「年年歳歳」でも紹介しています。クリップボードをご参照下さい。
またNHKの全国ニュース(NHKニュースクリップ2月13日の項参照)でも放映されるなどメディアの関心も高く、多くの国民の皆さんに「すでにこのようなことが可能な時代が来た」と知って戴くことが出来たのではないでしょうか。 「ITの力でチャレンジドにさらなる就労の可能性を拓く」大きな一歩になったと、ナミねぇは確信しています。

<by ナミねぇ>

◎ナミねぇとプロップ・ステーションによる「チャレンジドの就業支援」への取り組みの一例をご紹介します(詳細はそれぞれの項目をクリックしてご覧下さいね)

 厚生労働省「障害者の在宅就業に関する研究会」委員として、報告書「多様な働き方による職業的自立をめざして」のとりまとめに関わる。

 「障害者の在宅就業に関する研究会」において、支援機関による支援の現状(支援機関ヒアリング第一回)を報告

 内閣府中央障害者施策推進協議会委員としての活動

 福祉就労の場を本当の働く場に!「チャレンジド・クリエイティブ・プロジェクト」の推進

 「障害者就労支援京都府ITスキルアップ研修」の実施(京都府委託事業) etc.

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