プロップは「チャレンジドを納税者にできる日本」というキャッチフレーズを掲げて、ITを活用したチャレンジドの在宅ワークを推進する活動を、12年間にわたり実践しています。ITを活用することで、今まで働くことが困難とされたチャレンジドの多くが、在宅でも、施設でも、あるいは病院のベッドの上でさえも、介護・介助を受けながら社会参画するだけでなく、持てる力を「働く」という形で発揮できると認知されてきたことを大変嬉しく思っています。そして今、このような多様な働き方を推進する研究会が厚労省の主導によって開催されていることを、心から感謝するものです。
未曾有の少子高齢社会・日本においては、フルタイムで働ける人の比率がどんどん下がっていくにも関わらず、介護・介助を必要とする人や、定年退職者(年金受給者)が増え続けて行きます。このまま手をこまねいていると、重症心身障害者(30歳になる私の娘もそうですが)や痴呆を伴う高齢者などを護って行くための経済的・人的資源がどんどん減少していくことは明らかです。そのような人たちの淘汰が行われるような日本には決してなって欲しくない! というのが重症児を授かり、それを契機にプロップの活動を創設した私の願いであり、ミッションです。一人でも多くの人が、フルタイムであれ短時間であれ、「身の丈にあった多様な働き方で」社会を支える側に回り、誇り有る社会の一員として存在できる日本であって欲しいと心から願うとともに、プロップの活動を通してその実現に貢献したいと思っています。
全ての人が、持てる力を発揮できる社会、働く誇りを得られる社会、それを私やプロップの仲間、そして支援者たちは「ユニバーサル社会」と呼んでいますが、今こそ日本は「ユニバーサル社会」の実現に向けて行動を開始しなければならないのではないでしょうか。
このような問題意識から、プロップの実践体験に基づく「チャレンジド在宅ワーク推進への提言」を、以下にまとめてみました。当研究会の議論の一助となれば幸いです。
☆ 多様な働き方の実現には
コーディネイト機関(チャレンジド在宅ワーク推進機関)が必要
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チャレンジドが、アルバイト、SOHO、請負、自営など、正規雇用ではない働き方を自力で得ることが困難な現実を打開するためには、企業や自治体、政府機関などといった、仕事の発注者とワーカーを繋ぐ公平なパイプ役となれるコーディネイト機関が必要。
☆ コーディネイト機関の役割 (現在、プロップがおこなっている業務です)
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来所、電話・FAX、メールによる、相談窓口
- ITスキルとソーシャルスキルをアップする教育→将来的には完全なオンライン教育が可能
- オンラインによるワーカー募集などのジョブマッチング・システム(VCOMの活用など)
- スキルの評価
- アウトソーシングの受注に責任の負える体制(納期・グレード・価格を守れる体制と契約責任)
- 営業
- 受注した仕事の、在宅ワーカーに対する適正な振り分け
- 振り分けた仕事の厳密なチェック体制
- 適正な賃金支払いのための体制
- ワーカーの身体的、精神的悩みなどの相談窓口
- 安定的な就業が可能な在宅ワーカーを、企業・職安等との連携により正規雇用へ繋ぐ
*このような体制を整えていくことによって、最終的には補助金等に頼らない自主運営が可能となる。
☆ コーディネイト機関の組織形態
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プロップ(全国対象)やトーコロ(都内対象)など、すでにノウハウを持った組織の活用
- 自治体・地元企業・地元NPOの連携で各地に創設されつつありますが、最終的には47都道府県につき一カ所以上の設置を目標とする←―地域のことは地域に!
♪♪ モデル:三重県のITを活用した障害者の自立支援策「eふぉーらむ」
☆ 国(厚労省)による、制度の創設
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在宅ワーカーの育成を行う教育機関への支援(基本は有料講習)→障害者基礎年金等を自己投資に使って自己実現に向かう考え方を持とう
- 企業や自治体、省庁に対する、(チャレンジドへの)アウトソーシングの呼びかけ
- 省庁や自治体が、支援機関を通じてチャレンジドや高齢者に仕事を発注できるよう法的バックアップを行う(障害者雇用促進に関わる業務の自治体への権限委譲など)
- 法定雇用率―→未達成の場合、納付金 というシステムから
法定雇用率&アウトソース率―→未達成の場合、納付金というシステムに転換するなど、在宅ワーク促進のための制度の創設
- 前述の、自治体・地元企業・地元NPO連携によるコーディネイト機関に対する支援制度の創設→最終的には独立採算をめざす
- チャレンジドが在宅ワークを行える公的住宅の整備や、居住型施設・病院のIT化の促進
→総務省や国交省との連携
- 車いすシーティング技術の普及促進
褥そうや側湾の発症を防ぎ、働く時間・期間の安定をはかる車いすシーティング技術の修得を、車いすメーカー、医療従事者、リハビリ関係者に義務づける。(現在、このような車いすは「規格外」ということで助成金の対象からはずされることが多いが、就業を目指すチャレンジドがそのような車いすを入手することによって、褥そうや側湾の発症を予防し、健康を維持することができるので、医療費全体を俯瞰すると税金の支出は少なくなる。)
- アセスティブ・テクノロジー(自立支援機器)開発への支援→総務省、経産省などとの連携
☆ 海外機関との連携
- スエーデンのサムハル
約30年前に国策企業として設立され、現在は28のグループ企業を持ち、スエーデンの請負型企業としてトップの業績を上げている。32,000人の社員のうち29,000人がチャレンジド。技術教育機関および請負型企業として国家予算で設立されたが、現在は投入される予算より、チャレンジドからの社会還元が数倍になっている
♪♪12月2日pm3:00から、「ユニバーサル社会形成を促進するプロジェクト・チーム」(座長:野田聖子衆議院議員、副座長:浜四津敏子参議院議員)勉強会にて、サムハル日本代表:西野弘さんと野田さんが9月にスエーデンはじめ北欧諸国を視察された報告が行われるので、ぜひ皆さんご参加下さい。会場は衆議院第一議員会館B1 与党政調第三会議室。
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米国防総省のCAP(Computer/Electronic Accommodations Program電子調整プログラム)。ADAに基づき、国防総省がブッシュ元大統領のもとで設置。国防技術で培われた最高の科学技術を駆使して、チャレンジドを政府職員および企業人に育てるための教育・研究、機器開発を行っている。毎年300人のチャレンジド大学生をインターンとして受け入れ。
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イギリスのショウ・トラスト(援助付き雇用プログラムを行う非営利組織)レポートを添付
先月、理事長Mr.Tim.Pape(ティム・ペパ)氏がプロップを来訪され、意見交換を行った。
- GLADNET(グラドネット)
ILO(世界労働機関)の円卓会議から生まれた「ITを活用してチャレンジドの就業を促進するための世界機関」。プロップも会員としてMLで情報交換を行っている。
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