作成 1999年5月吉日 |
アメリカでは、「障害をもつ人」を表す言葉として「challenged」(チャレンジド=挑戦者精 神を失わない人)が使われています。積極的に社会参加をしていこうという障害者の前向き な挑戦意欲がこめられた言葉です。 しかし、今の日本の状況では、その意欲の反映はもとより、必要な情報や助言、家族以外 の人との関わりさえも充分に得られているとは思えません。 授産施設での仕事は、手作業が主であり、自立して生活していくだけの給料を得ることも 難しいのが現状です。チャレンジド自身にとっても、周りの家族にとっても、将来自立して 生活してゆけるかという不安が最も大きいもののひとつなのではないでしょうか。 在宅のチャレンジドに対しては、在宅重度身体障害者訪問審査事業やホームヘルプ事業が 行われていますが、対象者や世帯の状況により派遣回数、時間数、サービス内容などが決め られており、欲しいときにすぐ助言や指導が得られるとは限りません。 我が国では、障害をもつ人々、高齢になった人々は社会福祉の保護対象とみなされていま す。しかしこの政策は、社会参加というチャレンジドの基本的欲求を阻むばかりでなく、国 の財政面からも、もはや限界が目に見えています。 厚生省の調査結果によると平成3年11月における18歳以上の身体障害者の数は、272万 2,000人で前回(昭和62年)の調査に比べ約12.8%増となっています。 障害者全体における60歳以上の人の割合が58%から63%へと増加し、人口1,000人当た りの出現率でみると、70歳以上で90.4人(総数では28.3人)と急速に進む高齢化の影響も 顕著です。意欲ある人々の自立を促す方向へと政策転換を急がなければならない状況にある と考えられます。 私たちプロップ・ステーションは「プロップ」(=支柱、つっかえ棒、支え合い)という 名前のとおり、チャレンジドが、支えられるばかりの存在ではなく、支える一員として社会 に参加して活躍できる状況を生みだして行きたいと考えています。 具体的な活動としては、まずチャレンジドやそのご家族、関係者、関係機関から様々な相談をお受けする相談事業が上げられます。そのことにより、チャレンジドと関係機関双方へ 必要な情報を提供することはもとより、公平なパイプ役にもなりえると考えています。 また、機関誌の発行やコンピュータネットワークの運営により、情報発信、情報交換、相 互の交流を図ると共に、フォーラム・シンポジウムの開催により、社会への問題提起・啓蒙 活動も積極的に行っていきます。 技能の修得に関しては、実際にチャレンジドを対象にしたコンピュータ・セミナーを開催 するほか、コンピュータネットワーク網を使った自宅学習などの在宅支援を併用して進めて いきます。 このような活動を通して、情報弱者と呼ばれる人々が、自分が必要な情報を必要な時に受 け取ったり、発信したりできるようになり、家に居ながらにして社会の様々な人々と関わり をもち、社会性を身につけることによって、ひいては、それがチャレンジドの社会参加、自 立支援の一環につながることになるのではないかと考えます。 また、コンピュータを媒体にすることにより、今までボランティア活動に関心を示してい ない、或いは関心があるにも関わらず、何をすればよいのか分からなかった人々やその関係 者、そしてこういった取り組みを通して企業の積極的な参加を促すことが期待できます。 さらには、今後ますます増加が予想される、高齢者層にも活動の幅を広げることにより、 高齢者の社会参加、在宅支援の一助にもなりえるのではと考えています。 急速な発展が予想されるコンピュータとコンピュータネットワークを通じて、チャレンジ ドや高齢者を含めたより多くの人々が生きがいをもって積極的に参加している、支えている と実感できる地域福祉社会の構築を目指していきたいと思います。 加えて、阪神大震災以後、盛り上がったボランティア活動の高揚をただ単に一過性のもの とせず、ボランティア・地域住民・学生の実習や研修等の受け入れも積極的に進め、地域に 根ざした地域と共に歩む社会福祉活動を創造し、その拠点としての役割が果たせるような方 向で努力し、今後、その成果を得るために頑張るつもりです。 そして、これからの地域福祉としての保健・医療・福祉の充実とネットワークの拡充強化 に向け、この現状を憂え、長年、社会奉仕・福祉活動に携わってきたわたくしども同士が相 図り、チャレンジドの自立と在宅支援をはかることを目的として社会福祉法人「プロップ・ ステーション」の設立を計画し、もって、障害者福祉施策の一端を担い、これが増進に寄与 せんとするものであります。 |