支援企業探訪 その2

NEC


NEC広報部社会貢献推進室長 

山下 紘一 氏


NEC関西販売推進本部地域開発営業推進室長 

山本 茂 氏


interview :竹中 ナミ


世界中にC&Cを

竹中:お忙しいところ、お時間を頂戴しありがとうございます。いつもプロップ・ステーションの活動に温かいご支援をいただき、心から感謝しております。とくに毎週金曜日の98セミナーでは、2年以上にわたり御社関西支社のセミナールームを無償貸与していただいており、お陰様で多数の障害を持つ人たちにコンピュータの勉強をしていただくことができました。また、セミナー修了生の中から実務(仕事)に就く人も生まれており、就労促進の支援を目的とするプロップとして、嬉しい限りです。今日は、どうぞよろしくお願いいたします。

山下、山本:こちらこそ、よろしく。

竹中:最初に、NECの社会貢献活動全体について、お伺いしたいのですが・・・。どのようなお考えで、どのような活動を行っておられるのでしょうか?

山下:NECは、企業理念として「C&C(Compute & Communicate)を通して世界の人々が相互に理解を深め、人間性を十分に発揮する豊かな社会の実現に貢献する」ということを掲げており、国内だけでなく世界中でC&Cの輪を広げたいと考えています。

ボランティ活動からスポーツ・コンサートまで
多彩な社会貢献活動

竹中:日本国内だけでなく、世界各地で社会貢献活動をしておられるということでしょうか。

山下:はい。大きく分けて「ボランティア活動への支援」「地球環境保全活動への支援」「社会福祉活動への支援」「地域社会活動への支援」「芸術・文化・スポーツ等のメセナ活動への支援」など、5つの支援活動を行っています。
NECは海外の拠点も多く、国内の問題を国内だけで解決するというより、世界中の問題を世界中の人が共に考えて解決する時代ではないか、と感じています。
地球環境保全活動への支援では、人工衛星を利用したツルの渡りルート追跡調査を、資金とC&C技術両面で支援していますが、絶滅の危機に瀕している野生生物の保護という、技術とは縁遠いと思われた調査活動に私たちの技術が多少なりとも役立っていることを嬉しく思います。
また、オーストラリア国内で腎臓移植が必要な患者にポケベルを貸与し、適合するドナーが見つかった際に24時間以内に病院から連絡が受けられるようにするライフページプログラムを1985年から支援しています。

竹中:ボランティア活動や社会福祉活動への支援としては、どのようなことをしておられますか?

山下:プロップ・ステーションのコンピュータセミナーへの支援活動も、その一つですが、私はこのような活動を企業の社会貢献というより、企業の社会的役割という位置付けで見ています。企業市民としての役割を、社会福祉活動を通じて果たす、ということが重要だと思います。社員のボランティア活動への参加を支援するため、いつでも気軽に社内のコンピュータネットワークからボランティア情報が入手できる「ボラネット」を運営しています。また、この「ボラネット」を含め全国の福祉団体やボランティア団体が発信する情報をパソコン通信PC-VANを通じて、広く一般にも提供しています。

竹中:「PCボランティアワールド」ですね。プロップの情報も掲載させていただいており、感謝しています。

山下:身体障害者の方々のスポーツ支援として、車いすテニスへの支援を行っています。世界レベルではIWTF(国際車いすテニス連盟)主催の「国際車いすテニスツアー」(21カ国、89大会)を、日本では全国のトップクラスの選手が一同に会する「NEC全日本選抜車いすテニス選手権」を支援しています。
また、視覚障害者の方々に向けた「パソコン・ワープロ入門講座」(JBS日本福祉放送 ふれあいネットワーク )の単独提供や、聴覚障害者の方に向けては全日本聾唖連盟に「手話−日本語検索」の辞書づくりのためのパソコンを寄贈したり、全国高校生・大学生の手話によるスピーチコンテストへは第1回大会(1984年)から支援させていただいております。

竹中:文化面では、昨年12月の小澤征爾氏指揮によるボストン交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、タングルウッドフェスティバルコーラスのボランティアによる日米友好演奏会という画期的なコンサートがありましたね。

山下:NECスーパータワーコンサートですね。これはNEC本社の地域社会活動への支援の一環で、本社ビルのアトリウムを利用して、近隣の住民や障害をお持ちの方々をご招待して定期的に開催しています。とくに、小澤征爾氏の日米友好演奏会のときは、大変な人気でした。NECは小澤征爾氏指揮によるボストン交響楽団を長年にわたり支援しているんです。
その他にも、オペラやミュージカルなど良質の文化を多くの方に提供するための支援活動も続けています。

竹中:大企業ならではの社会貢献活動メニューですね。でも、こうした活動を定着させるまでには、いろいろご苦労がおありでしょうね。プロップのコンピュータセミナーも、全社的ご支援をいただくまでに少し時間がかかりましたし。

山本:そうそう。C&C第一官庁システムの北風主任の「プロップ・ステーションさんにセミナー会場の提供ができないか」という提案を受けて、初めは関西支社独自の支援活動として会場提供をしていましたね。今ではNEC社会貢献室の全社的支援活動の一つになってますが。
でも私は、プロップさんの「障害を持つ人を納税者に」という目標に大変共感を覚えてます。目標に向かって、いろんな企画を一緒にやっていけたらいいですね。

竹中:ありがとうございます。お陰様でセミナー修了生の中から技術者も生まれていますし、実務部門プロップ・ウイングへの仕事の発注なども戴けるようになってきました。

山下:どんなお仕事ができるようになっているんですか。

竹中:ワープロやデータベース、DTPなどが主ですが、今後の方向性としてはインターネット関連の仕事を受注していきたいと思っています。パソコン通信を使った在宅勤務のネットワークを、ウイングを拠点にして展開したいと考えています。
来春、厚生省が「障害者情報ネットワーク」(仮称)というBBSを立ち上げ、インターネットにも接続するそうなんですが、福祉機器情報のような企業情報をネットワークに掲載する仕事などを、一般企業より低廉な価格で受注できるのでは、と考えています
。またインターネットの「ホームページの作成」などは、すでにいくつか受注態勢に入っています。在宅勤務なら、遠隔地に居る人や街の構造上通勤が困難な人、難病などで自宅で体調をコントロールしながらの勤務を希望する人など、今まで以上に働ける人の層が広がります。プロップが受発注や検品に責任を持ち、各地の障害を持つ人に、その人の技術に応じた仕事をネットワークを使って振り分ける、という形態を考えています。サテライトオフィスを、もう一歩進めた就労の形、といえばよいでしょうか。

山下:なるほど、在宅勤務ですか。NECとしてもセミナーへの支援だけでなく、修了生への仕事の面での連携もぜひ検討していきたいと思います。

竹中:どうぞよろしくお願いいたします。ところで、今後、障害者・高齢者ユーザーが増えていくという状況に対して、NECとしてはどんな戦略をお持ちですか?

ビジネスとしてサポート機器の開発を

山本:さまざまなサポートが必要な人たちが、できるだけ若いときからコンピュータに触れるということが必要で、そういう意味では養護学校など障害を持つ人たちの教育機関などには、先駆けてコンピュータが導入されるというようなことが必要なんではないでしょうか。それも寄付行為としての導入ではなく、ビジネスとして成立し、各社が競ってサポート機器の開発に取り組むような、そんな流れが必要なのでは、と思います。

竹中:ビジネスという観点は、プロップとしても大変重要だと思います。とくに実感しているのは「コンピュータの勉強は、パソコンを買うところから始まる」ということです。自分で「予算」「機種」などを真剣に検討して購入するという努力をするうちに、「この努力と投資の元をとるぞ」という意欲が沸いてきて、そういう経過を辿った人はセミナーでの進度が全然違います。

パソコンは電動タイプタイター?

山本:たしか、障害者の方の購入には補助もありましたよね

竹中:はい。パソコンについては(大阪市では)上限20万円弱の補助が出ます。でも、条件がいくつかあって、「上肢または上肢と言語の障害で、1,2級の人」「世帯の収入による制限あり」「パソコンという名称では助成金が出ない」などなど・・・とくに、パソコンという名称が使えない、というのは情けないなぁと思います。

山下:え? じゃぁ、どんな名称で申請するんですか?

竹中:「電動タイプライター(和文)」です(笑)

山下、山本:??? なんですか、それ?

竹中:「パソコン」は贅沢品ということで、この助成金の主旨である「日常生活用品」からはずれるというのが、行政の認識だそうです。

山下:でも、「電動タイプライター」なんて、いまどき誰が日常的に使ってるんです?

竹中:さぁ、知りません(笑)。まぁ厚生省の方は、この制度を各自治体が「柔軟に運用」してくれたらいい、とおっしゃってましたけど。まぁ、笑い話みたいなホントの話ですけど、何とか実状に添った文言に変更いただいて、さまざまな障害を持つ人たちが適切な価格でパソコンを購入し、自立の道具に使う、というようになってほしいと思います。

山本:ふ〜む、「NECの電動和文タイプライター」なんて申請書に書かれるわけですか。業界としてもなんとかせねば(笑)

竹中:パソコン購入の話題が出ましたので、最後に「新製品情報」などがありましたら、お聞かせください。

山本:「98MATEXシリーズ」が好評ですが、とくにPC-9821Xe10/S15という機種が、本体・ディスプレイ・ソフト36種類組み込みのセットモデルで、標準価格248.000円というお手頃価格で発売されました。これから機器を購入予定の方は、ぜひご検討ください。また、機器に関する忌憚のないご意見をいただけたら嬉しいです。

竹中:障害を持つプロップ会員の方には、購入に際してのアドバイス、助成金の申請についてのアドバイス、販売店へボランティアさんが一緒に出向いての機種選定などもしています。音声対応ソフトや順次キー入力などサポートソフトの配布もしており、障害を持つユーザーの裾野が広がって、より使いやすいコンピュータを生み出すための意見が、どんどん出てくるようにしたいと思います。そして、一人でも多く就労に結び付くようにプロップとして頑張りたいと思います。今後とも、ご協力をよろしくお願いいたします。

今日は、本当にご多忙の中貴重なお時間を頂戴し、ありがとうございました。

(おわり)


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