リレーエッセイ 「チャレンジドの夢」

 久保 利恵さんの場合

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久保さんの写真  「絵本作家をめざして」

 私は、生後6ヵ月にウェルドニッヒ・ホフマン病を発病し以来、首から下の筋力がほとんどありません。この病気は、私が今まで一度も同じ病気の方にお会いしたことがないほど、原因不明で治療法もない進行性の珍しい病気です。生活の全てにおいて介護が必要なので、24時間両親に介護してもらいながら、自宅で車椅子生活をしています。
 こう書くと、「わぁー、大変そう。」と思われるかもしれませんが、私自身さほど不自由さは、感じていないのです。生まれてから一度も歩いたことがないし、そういう便利さを体験したことがないので、分からないだけなんですけどね。生まれつき健康で自由に動ける人は、それが普通なのでしょうが、私の場合は、違うんです。生まれつき歩けなくて自分では身動き一つできない、しかも、風邪を引けば一晩で肺炎になってしまう、これが普通なんです。だから、体が不自由で辛いとか嫌だとか一度も思ったことがありません。私が鈍感なだけかもしれませんが…。まぁ、とにかく楽天的な性格に生んでくれた母に感謝しています。
 寝たきりを無理やり車椅子に座らせてもらっているような重度障害者ですけど、保育所から短大まで、大勢の皆さんに支えてもらったお陰で、養護学校ではなく希望通り地域の学校へ車椅子で通いました。好きだった絵もめいいっぱい学び「絵本作家になる!」という将来の希望をもつことができました。いろんな人と混じって勉強したり遊んだり悩んだり、こんなふうに過ごせて本当に良かったと思っています。充実した学生生活でした。
 高校生になった頃ぐらいから、自分が体が不自由なのに、同じように体の不自由な友達や知人が少ないと言うことに気が付きはじめて、それと同時に福祉に関する情報を収集したり、もっと勉強をしたいと思うようになりました。が、しかし、実際のところ体力の無い私には、日々の学生生活をこなすのが精一杯で、体力的にも時間的にも無理でした。美術系短大を卒業して在宅になり、絵本作家になるための勉強を続けたり、個展を開いたりという活動をしていました。絵本作家への道は、なかなか大変そう、このままでは生計が立てられない、経済的にも自立しながら、何とか絵本作家になる夢を実現したいと思っていた時に、新聞でプロップ・ステーションの活動を知ったんです。「在宅勤務」は、とても魅力的な言葉でした。
 イラストプロップのセミナーに通いはじめて、短大時代にCGを少しだけ勉強していたものの、全てのことが新しい経験でした。パソコン通信もインターネットも、そして、はじめての電車通学も。やはり、ここでも大勢の方に支えていただいて、たくさんのことを学びました。今まで出会った全ての方に感謝しています。今では、少しづつですが在宅でお仕事をさせていただけるようになりました。
 お仕事ができるようになったことは、私にとってとても嬉しいことですが、それと同じくらいインターネットと出会えて本当に良かったと思っています。インターネットは本当に楽しいくて素晴しい世界です。いつでも情報を得ることができるし、自分から情報を発信することもできる。そして今、電子メールは私にとって重要なコミュニケーション手段になっています。
 これからは、私の生活必需品としてパソコンを活用し、一日も早く経済的にも自立して、「絵本作家になる!」という夢を実現させたいと思っています。

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