村木厚子さんの裁判を見守り支援する部屋

平成22年3月29日 第16回公判がおこなわれました。

國井弘樹・検事と遠藤検事が証人として出廷しました。

第16回公判 傍聴記 平成22年3月29日
by ナミねぇジャーナリスト江川紹子さん

「厚子さん第16回公判傍聴記 by ナミねぇ」

3月29日(月)花冷えなんてもんやない、寒風の大阪!ぶるぶる…(^o^;
あ、今朝も江川さんが傍聴に来られてる! 早朝東京を出られたそう。紹子さん、ありがとうございますm(__)m
傍聴席に入ると、江川さんに名刺を渡して挨拶する傍聴者あり。
う~む、さすが著名なジャーナリスト!! 今日は、厚子さんのお嬢さんも傍聴に。

10:05開廷。
今日は上村、河野、木村の3氏を取り調べた國井検事2回目の出廷。
彼こそ私に「検察の取調べノウハウ」を書かせた検事だ。
再度、第9回公判傍聴記(被疑者ノートを公開したTOM氏の傍聴記も併載)を確認の上、今日の傍聴記を読んで戴ければと思う。
http://www.prop.or.jp/court/2010-02-25.html

今日の公判は、検事側からの尋問で公判の幕開け。
白井検事「あなたは遠藤検事と途中で上村氏の取調べを交代してるが、上村氏が村木被告の関与を否定していることを聞いていたか?」「いえ、聞いていません」「遠藤検事の調書は読んでいたか」「いえ、読んでいません。でも前田主任検事からは(村木元企画課長の関与を)聞いていた。」と國井検事が答える。
先日出廷した林谷検事を含め「前田―林谷―國井」3検事が、厚子さん主犯説を主導したことが、冒頭から明確になったことを実感する。

「あなたは上村氏の否認証言を調書にしていないが・・・上村氏が(調書に書かれた村木主犯説を)覆す可能性が有ったのでは?」と聞く白井検事。
「最初から単独犯と主張していたので、覆す可能性を感じた」と応える國井検事。
「なので、村木さんやあなたの起訴は決定してるよと(上村氏に)伝え、もう一度きちんとはなして下さいというと上村氏は・・・スラスラと、翻すことなく喋ったので、調書にした。否認している間は不確定な状態なので調書にする必要はない。(被疑者が)『真実』を語ってから調書にする。」と応える國井検事。

どうやら「真実はすでに決まってるんや、それに沿って供述せんかい!」っていうのが、検察の姿勢らしい。もしかして心の底では「裁判も不要」って思ってる!?

「上村氏が、被疑者ノートに取調べの様子を詳細に書いているのは知っていたか?あれは真実か?」と白井検事。「自分の記憶とは違う。彼は揺れていたということだと思う。それにしても、うまく私の会話を取り込んで狡猾に書いているなぁという印象だ。」上村氏の被疑者ノートを真っ向否定する國井氏。
「被疑者ノートに、トランプを2回したことが書かれてるが・・・どんな理由でトランプを?」と白井検事が聞く。

「最初は、両親が面会するという前日に、暗い顔をしてたら心配をかけるだろうということで、トランプをした。2回目は保釈前日。翌日保釈されて外へでるとマスコミが居てインタビューされるので、暗い顔では・・・と(本人が)気にしてたので、気を楽にさせるために、トランプをした。」まるでブラックジョークのような話を、平然と語る國井検事。「もう何を言っても無駄、あきらめた、投げやりな気持ちになった・・・」と被疑者ノートに心情を吐露した上村氏。
そんな上村氏を、まるで親切心からトランプ遊びに誘ったかのような國井検事の証言に、國井氏の取調べに対する冷酷な姿勢が伺える。猛獣が、か弱い小動物を弄ぶかのような取調室の風景を想像し、慄然とする私。

上村氏は被疑者ノートに「取調室に行ったら今日はトランプを持ってきたから一緒にやろうと大貧民とかダウトをやった。嫌だというとどうなるかわからないから応じた。こんなことしている時間があるなら早く調べて早く出して欲しかった。」と記している。

「取調べメモについて聞くが」と話題を変える白井検事。「メモはいつも取っているのか? 破棄の理由は?」
質問にキッとした口調で國井検事が答える「私はメモをとるために取調べをしてるのじゃない! メモは全て調書に反映してるので、破棄に問題はない。」

國井検事に言い返された白井検事は「上村氏は調書が間違っていると公判で証言したが・・・」と尋問しかけ、少し間をおいて尋問内容を変える。「取調べでは号泣した後、村木さんの指示を認めたんですね?」同僚である國井氏の態度に気分を害したが、気を取り直そう・・・と自分に言い聞かせたかのように見える白井検事。微妙な態度の変化が感じられる。

公判直前に、塩田氏に石井議員との交信記録が無かったことや、(倉沢氏の押収物に)実は名刺が無かったことを北村元課長補佐に知らせたばかりでなく、取調べメモの破棄を問題視する白井検事と、今回の事件を政治案件&厚労省ぐるみ犯罪というストーリーに創り上げて、村木厚子現役局長逮捕を実行した、前田―林谷―國井3検事ラインとの「確執」が、ほんの少しだが垣間見えた瞬間だった。

白井検事は、上村氏が最初の取調べから「単独犯を主張していた」ことを、どう考えるかと國井氏に重ねて聞くが、「単独犯である動機が、予算で忙しかった、凛の会からせかされて一人でやったなど、同じ国家公務員として私にはそんな動機は理解できない! 偽造とはいえ稟議書も作成しているし不自然な供述だ。フロッピーのバックデートなど、第3者の指示があったに決まっている、村松氏など周りのみんなが証言してる、と追及すると、ちくしょう!と号泣しながら、分かりました、認めますと・・・そういう流れだ。」白井検事を鼻先であしらうように応える、國井氏。

ここで尋問が弁護側に変わる。
弁護側は、國井検事が上村氏取調べの当初から「(上村氏が)大臣印を勝手に使って(本事件とは無関係の)証明書を作成したことがある」ということや、「厚労省職員が、法令集への執筆謝金を係長の口座(当時の係長は上村氏だった)にプールしていた、いわゆる裏金事件」などの話題を上村氏に投げかけ、「色んな不正を働いていたことは分かっている」と、あたかも別件での逮捕や勾留延長が有るかのように迫って「村木課長主犯説」を供述させた取調べ手法に、疑問をなげかける。

「それは脅しではないか!?」と問う弁護人に対し「真実を話すことを渋るので(裏金の件などを知ってると伝えて)楽にしてあげようと思った。色々やってるのに、この事件だけ隠しても意味ないことを伝えただけ。」と國井検事。

う~む、検察の取調室に連れ込まれたら、どんなささいな悪事でも(大きな悪事は勿論のこと)調べ上げられ、追い詰められ、いったい自分が今、何の罪状で取り調べられているのか分からんような心理状態に追い込まれ、自分の返答の結果の軽重を自覚する機会も与えられないまま、喋らされ、検察がいうところの『真実』に沿った供述調書が作成されるものなんや、ということを、よ~く覚えておこう!!
そして、疲れ果てたら「トランプ遊び」をさせられることも・・・

心底「怖いなぁ・・・」と思いながら傍聴していたが、少しだけ痛快な場面が。

國井検事は、木村氏(石井議員の事務所に、河野氏とともに口きき依頼をしに行ったことを否定した証人)への取調べで、机を叩いたり大声をあげたことから、木村氏の弁護人から「脅迫まがいの取調べだ」と申し立てがなされ、検察の中で「調査・措置」が行われた。その内部調査の記録を、弁護人が裁判長の承諾を得て法廷内のディスプレイに表示すると、猛烈に抵抗をはじめた。

その記録、大坪弘道特捜部長作成の「取調べ関係申し入れ等対応票」によると、佐賀元明副部長の聴取を受けた國井検事は「(取調べにおける)木村氏は、真摯に記憶喚起に努めており、机を叩く必要はなく、そのような事実は無い」と述べたことになっている。
この弁明によって、大阪地検は「恫喝的取調べは無かった」と判断したようだが、今日の國井氏は証言席で、怒鳴ったことと机を叩いたことを認めている。
証言の信憑性が、根底から疑われる状況に慌てた國井検事は、「副部長と自分の間で認識の齟齬が有っただけだ」と、さかんに弁解を繰り返したが、弁護人から「では、特捜部長名で出ているこの文章は、作文だと言うんですか!?」と問われ、傍聴席からも失笑が湧いて、唇を噛むという一幕があった。

しかし「少しだけ痛快」だったのは一瞬のことで、その後、國井検事が木村氏に「弁護人解任届」を書かせたことが明らかに。弁護費用(の額?)のことを國井検事に相談をした木村氏に「弁護人は解任できる」と言うやいなや、すぐさま検察庁の紙を持ち出し、書き方を指導(!?)しながら自筆で「解任届」を書かせ、即刻木村氏の弁護人は解任されたという。その「解任届」もディスプレイに表示された。

「検察庁に解任届を出しても弁護費用の問題解決にはならないということは、法律の専門家ではない木村氏には分かりませんよね。解任しても、費用の話はそのまま残るんですよ。」と、國井検事の画策を指摘する弁護士。検察はそれで溜飲を下げたとしても、木村氏が相談したかった「弁護費用の話」には、実はな~んも繋がらないのだ。
弁護士の指摘に、「はぁ」と鼻先で答える國井検事。
「(これで)けっこうです!」と、弁護側が尋問を打ち切った。

検察側、弁護側の尋問が終わり、裁判官たちがとりまとめの尋問に入る。
右陪席裁判官が「組織的犯罪だと國井検事が考える理由」について、聞く。「キャリアからノンキャリは蔑視されており、上村氏はノンキャリ仲間を庇って単独犯だと言っていた。ノンキャリの仲間に迷惑をかけたくないと思っていたのだ。」と國井検事。「ノンキャリの上村氏が単独でやっても、迷惑をかけることに違いはないのでは?」と裁判官。「単独と組織的とでは重みが違う。」と答える國井氏。「そのように上村氏が供述したのですか?」と裁判官。「いえ・・・私がそう感じたということです。」

「木村氏に対して、大声や机をたたいた理由は?」「足を組むなど態度が悪かったことや、客観的証拠を示しても『分からない』などと言って、真剣に対応しなかったから。」と國井氏。「机をたたくと、すぐ変わった?」「他人事のように考えていた、申し訳なかったと謝った。」「被疑者としての取調べですよね。逮捕されるのではないかと感じている状態ですよね。」「はい・・・」

左陪席裁判官からの尋問に移る。「ノンキャリが虐げられ、蔑視されていることが(本当に)動機なんですか?」「それが背景にある。」「本件の背景に?具体的には?」「キャリアから汚れ仕事をやらされるのがノンキャリ。」「具体的には?何人のキャリアから?」「塩田、村木・・・と聞いた」「かなり特定されますね。」「この話は、特定というより厚労省全体に渡っている。この件だけではない。直さなければいけないと上村氏は言っていた。」と國井検事が言う。「それなのに単独犯と主張? 矛盾していない?」と裁判官が突っ込む。「たしかに・・・でも、同僚の心配をしていると思った。」「同僚?具体的には誰?」「・・・一般的に・・・特に誰ということではなく・・・」口ごもる國井検事。
「上村氏の不眠について。眠れないと言ったのですね」と聞く裁判官。「寝付きが悪いと言っていた」と國井氏。「薬は?」「必要なら拘置所で処方されるでしょう」「一般論を聞いてるんじゃないんです。」と裁判官。実際には、薬は処方されなかった。

最後に裁判長が、メモ破棄に関して再度聞く。「上村氏が公判で(証言を)ひっくり返すという危惧は?」「はい、ありました」と國井氏。「すると調書との食い違いが出ますね。裏付けをとっておこうとは思わなかった?」裁判長の問に國井氏が声を強めて「メモや被疑者ノートと調書では重みが違います。調書は署名し指印を押してある。メモはとっておく必要は無いと思っています。」と、言い張る。「検察事務官は、たとえば上村氏が泣き出したとか記録はとってる?」「何もメモしてないと思います・・・そんなこと書かないですね。」となぜか少し笑いを含んだ声で答える國井検事。「(被疑者の供述時の態度は)調書を読むと思い出すので、大丈夫ですよ。」

「こういう時は保釈が難しい、といった話は?」と裁判長。「ふだん刑事事件をやってるので、いくつか事例を・・・一般論で言いました。」「今回の事件で保釈になるかどうか、という話は?」「調書に書いてる一回だけ。保釈前日に弁護人と迎えの車の話をした時だけ」「余罪について、穏便にすると言ったのは?」「本人が再逮捕を怖がっていたので・・・個人的には大丈夫と思う・・・と別れ際に言いました。」「あなたが紙に、塩田、村木、上村など相関図を書いたと、被疑者ノートにありますが。」「氏名と矢印を書いた記憶がありますが・・・あれは彼のほうから、供述の概要を教えて欲しい、弁護人と相談させて、と言われたので、分かりやすくなればと思って書いたのです。」と國井氏。

「終わります!」裁判長が、もう充分、という声で終了を告げる。

最後の尋問で「取調べ中に起きた多くの出来事が、供述調書には記載されていないこと。そしてメモは破棄されていること。」を裁判長が明確にして、國井検事の証人尋問は終わった。

休憩のあと2名の検事の尋問が残っているが、上京の時間が迫ったので、江川さんに後を託して大阪地裁を出なければならない。
夕刻から、総理主導で設置された「雇用戦略対話」のワーキンググループ(WG)会議に出席するのだ。
過去に2回、官邸で開催された「雇用戦略対話 本会議」にゲストで招かれたが、一人3分間の制限があったうえに意見交換の時間も無かったが、今日から開催されるワーキンググループでは「エンドレスの議論」が出来るという。(注:会議終了後にこの傍聴記を書いているが、残念ながら第1回のWGは、エンドレスではなかった!)

メンバーは、労働界から連合、産業界から経団連と日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、有識者として慶応大の樋口教授と北大の宮本教授、そしてナミねぇという顔ぶれ。厚子さんと一緒に長年取り組んできた「チャレンジドの就労促進とユニバーサル社会の実現」について、厚子さんの分も一生懸命発言しなければ!と決意を新たにする私。

法廷を出る前に、厚子さんとハグを交わす。
今日の厚子さんは、チャコーツグレーでスタンドカラーというとてもお洒落なスーツ姿。「めちゃ似合っててナウいやん!」と、思わず古臭い言葉で褒めてしまう。
「ありがとう」と、はにかむ厚子さん。

今日で、取調べ検事の出廷が終わり、次回からは3回にわたって「被告人質問」つまり、厚子さん自身が証言台に立つ日が続く。
「頑張ってな!!」と厚子さんの耳元でささやいて大阪地裁を後にし新大阪駅へ向かう。
寒風の中で健気に咲く新御堂の桜に、厚子さんの姿をだぶらせながら・・・・

追記
私は第16回公判傍聴を中座したが、江川紹子さんの傍聴によって、國井検事に続く遠藤検事の尋問において裁判長が「取り調べ検事の裁量で録音録画することは認められないのか」と問い「申請したことがない。(取り調べを行った)拘置所には器具はないし」と遠藤検事が答えたところそれに対し… 「ICレコーダーとかがあるでしょう」と、裁判長がソフトな口調で鋭い突っ込みを入れたとのこと。
結局、取り調べ状況を記録に残す「可視化」が必要であると、一連の検察官証人が如実に示す結果となった公判であった。

<文責:ナミねぇ>

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「厚子さん第16回公判 
江川紹子さんツイッター傍聴記」

厚労省元局長村木厚子被告の公判:公的証明書を偽造した上村係長を取り調べた國井検事が前回に引き続き出廷。上村係長は弁護人から差し入れられた「被疑者ノート」に國井検事から言われた言葉や、自分の言うことを調書に書いてもらえない、供述と違うことが書かれていると書いていた。
公判廷で取り調べ状況についての上村係長と國井検事の証言は、まっこうから食い違う。検察側から「上村さんが実際の取り調べと違うことをノートに書いている理由をどう考えるか」と聞かれた國井検事は、次のように答えた。

「当時から、彼は事実を供述するかどうか非常に迷っていた。(村木被告の関与を)供述した後も、単独犯にできないかと言われた。心が揺れ動いていた。(被疑者ノートには) 私の話をうまく取り込んで書いている。狡猾だなと思う」と上村被告を非難。起訴前日には、村木ともども起訴することを伝えたうえで「今までのことは忘れてもらって結構なので、一から話をして欲しい」と語りかけたところ、上村は「スラスラと今までの供述を繰り返した」と取り調べの正当性を強調。上村から署名拒否されたことはないと主張した。

國井検事に対し、弁護人が反対尋問。弘中主任弁護人は、昨年5月26日に上村係長を任意同行・逮捕してから、連日取り調べを行ったのに、5月30日まで事件についての調書を1通しか作っていないことに着目。各日の取り調べ内容を確認したうえで、「なぜ調書にしなかったのか」と追及。國井検事は「内容が裏付けがとれなかったから」などと弁明。弘仲弁護士は「あなたは供述の裏が確認できなければ調書にしないのか」と問うと國井検事は「そうです」と認める。さらに、國井検事がその後村木被告の取り調べをした際、1通も調書を作成していないことを弘仲弁護士が指摘

「被疑者が否認したら、否認調書を作るのは当然。あなたは被疑者が否認しても否認調書を作らないのか」と迫った。國井検事は「ケースバイケース」と。弁護人は「違う検事の取調べに対して、同じように否認しているのであれば、意味がある」と追及。 

國井検事は、「従来の供述内容と変わらなかったから」と繰り返すだけだった。その後、河津弁護士が立つ。河津弁護士から驚きの事実が……

法廷に戻らなければなりません。この続きは夕方  ↓

國井検事は、逮捕された上村係長と合わせて、「凜の会」設立者の一人木村氏の任意での取り調べも担当。検察側の筋書きでは、木村氏は倉沢会長と共に石井議員の事務所に口添えを頼みに行ったとされる人物。しかし木村氏も、公判での証言でそうした調書は「検事の作文」と証言している

さらに、國井検事から怒鳴られたり机を叩かれたりして恫喝された、否認しても認められず「いいんだ、サインしろ」と迫れられたなどと証言している。國井検事は、検察側主尋問の中で怒鳴ったことと机を2、3回叩いたことは認めながら、次のように説明していた。「木村さんは足を組んで体を斜めにしていて、とても真摯に話しているとは思えなかった。それで『私も真摯に調べているのだから、あなたも真摯に応じて欲しい』と言った。すると木村さんは姿勢を正して『他人事と考えていた、すみません』と言い、態度が変わった」と。

その後、木村氏は「スラスラではない」ものの、「事実」を認めるようになった、と國井検事。机を叩くなどの恫喝的な取り調べはやめるよう、木村氏の弁護人検察庁に申し入れている。それについて木村氏に確認したところ、「私が出してくれと言ったわけじゃない」と言った、と國井証言。さらに、木村氏の方から「弁護士を解任したい」というので紙を渡して、最初に解任届と書いて、あとは自由に書いてもらった、と。ここまでが検察側の主尋問で出た話。反対尋問に立った河津弁護士は、まずはこの國井検事の言い分を確認。その後、1通の書面を示した

示したのは、「取り調べ関係申し入れ等対応票」と題する書面。木村氏の弁護人からの申し入れの後、佐賀元明特捜部副部長が國井検事に事情を聞いた時の状況が書かれている。佐賀副部長に対し、國井検事は木村氏の供述態度などについて次のように述べていた。<木村は真摯に供述しており、机を叩く必要はなく、そのような事実はない>。この説明で、大阪地検は國井検事が机を叩くなどの恫喝的取り調べはしていないと判断したもよう。國井検事は上司に対し、机を叩いてないと、嘘を言っていたのか。河津弁護士が証言と書面の矛盾を突くと…

國井検事は「私は恫喝したり恐喝したりするために机を叩いたんじゃない」「机を叩いた後は真摯になった」など述べた後、「私と副部長の間のやりとりに不十分なところがあった。恐喝恫喝したことがあるのかと聞かれたが、そういうことはしていない」などと弁明した

國井検事の発言は、上司の事情聴取で述べたことと、公判での証言とどちらが事実なのだろうか……

裁判官たちも國井証言には疑問を持ったよう。たとえば上村係長が当初単独犯を主張していた(國井によれば真実を隠していた)理由について、國井証言は「上村はノンキャリの同僚を庇っていた。厚労省は国民からの批判浴びることが多く。また組織的不正が明らかになったら…同僚が悲しい思いをする」と。左陪席裁判官は「ノンキャリの上村の単独犯でも、他のノンキャリに迷惑がかかるのは一緒ではないか」と率直な疑問。國井は「1ノンキャリがやるのと組織的では、国民の批判の目は違う」と説明。裁判官「上村がそう説明したのか」國井「それは私の想像」

裁判官は重ねて「なぜ、本人に聞かないんですか」。國井「聞いたが、細かいところまで答えてくれませんでした」。裁判官「聞いたんですか」國井「……」

ノンキャリの同僚を守るために、キャリア官僚の村木被告の関与を言えなかったというわかりにくい説明には、右陪席も「矛盾を感じませんか」と至極もっともな疑問を投げかけていた。そして、最後に裁判長も質問。「上村が公判で証言をひっくり返すかもしれないと、捜査段階で思っていたのか」國井「はい」裁判長「取り調べ状況について主張が食い違う可能性があるのだから、裏付けを残しておこうとは思わなかったのか」。裁判長、検事のメモ廃棄について、かなり疑問を感じている様子

國井検事は上村が泣き出した後に供述を始めたと述べているが、そうした状況はメモもせず、記録にも残していない。裁判長はその点について「いつ泣き出したのか分からなくならないか」と問う。國井検事は「調書を見れば思い出す」と。けれど、客観的にその事実を示す記録は何もない

 木村氏、上村係長と次々に村木被告の関与を認めるストーリーの通りに「自白」させた國井検事は、最後に、否認を貫いていた村木被告の取り調べを担当。大阪地検特捜部は、國井検事の”捜査手法”を知ったうえで、この配置を決めたのか……

 次に出廷した遠藤検事は、当初村木被告を取り調べ、その後國井検事と入れ替わり、上村係長の取り調べをした。事実関係については、ほとんど詳しい調べはせず、心境などと聞き、最後に反省文を書かせた、と。その反省文について、上村は遠藤検事に書き直しをさせられたと述べている。書き直しの理由について、「訂正箇所が多かったので、『清書してください』と言った」と。さらに事件による被害について言及したものを想定していたのに、短いものだったので「短いね」と述べた、と。裁判官は、反省文を書き直しをさせる経緯などを確認。

 また、遠藤検事も上村係長が公判では証言を翻すのではないかと感じていたと述べたことについて、裁判長は「取り調べ検事の裁量で録音録画することは認められないのか」と問うた。「申請したことない。(取り調べを行った)拘置所には器具はないし」と遠藤検事。それに対し…

「ICレコーダーとかがあるでしょう」と裁判長はソフトな口調で鋭い突っ込み。ちゃんと取り調べ状況を記録に残す「可視化」が必要であることを、一連の検察官証人が示す結果となった

 メモを捨てたというが、メモは個人のものであっても、そこに書かれた情報は税金を使って得た国民の財産だ。メモ紙に価値はなくとも、情報は高額の価値がある。公務員が税金を使って得た情報を勝手に捨てるのは許されない。

 今日のポイントは (1)被疑者が検察の筋書き通りに供述しないと國井検事は調書をとらないのではないか、との疑問が提起された (2)國井検事は被疑者を恫喝していたという訴えに対し、國井検事が上司に嘘を言ったか、大阪地検ぐるみで「その事実はない」と隠蔽した疑いが持ち上がっていること

(3)検事の取り調べに裁判所が疑問を抱き、鋭い質問が相次いだ挙げ句、裁判長がICレコーダーによる録音を採ることもできると、可視化の必要性に言及する質問を行った??という3点だと思います。それを書いた上ならトランプ話でもなんでもどうぞ、という感じ

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